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『相対性コム デ ギャルソン論 なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか』

“Soutaisei COMME des GARÇONS Rom: Naze Watashitachi wa COMME des GARÇONS wo Katarunoka”

元『ハイファッション』副編集長/「hi fashion ONLINE」ディレクター西谷真理子編集による、東京を代表するファッション・ブランド、コム・デ・ギャルソンに関する論文、対談などをまとめた書籍。巻末には「年譜・川久保玲とコム デ ギャルソン」や「コム デ ギャルソンを読み解くためのブックガイド26」も収録されている。出版は2012年12月(フィルムアート社)。建築、哲学、アート、デザイン、都市論、メディア論、社会学など幅広い分野の専門家からなる執筆陣による論文集であり、従来のジャーナリズム主体の考察とは異なる視点が取り入れられている。また、コム・デ・ギャルソンに関する多くの書籍、雑誌のとは異なり、ブランド公認のオフィシャルなものではないという点も特徴である。巻頭言に「業界の外側、外野によるコム デ ギャルソン論集」とあるように、コム・デ・ギャルソンそのものの表現について深く掘り下げる論考ばかりではなく、ファッションの周辺領域からコム・デ・ギャルソンという現象を記述する論考・対談も多くふくまれる。この点についての批判的な見方もあるが、ファッションに関する言説の構築、蓄積という観点からは本書の意義は大きい。80年代にはボードリヤールやバルトのような批評家がファッションに言及しているが、日本においても、欧米諸国においても、こうした議論が十分に深められることはなかった。その背景には、ファッションがひとつの成熟した(論じるに値する)カルチャーとして認められていなかったという文化的背景以外にも、ジャーナリズムとしてのファッション論がブランドやデザイナーに対して十分に独立した立場を確立することができないという経済的・産業構造的背景もあった。その意味では、ファッション・ジャーナリズムの中心にいた人物がこのような外縁的な語りの重要性を問いかけ、編集している点こそが本書の特異性とも言えよう。近年、同じく西谷真理子編集による『ファッションは語りはじめた』(フィルムアート社、2011)など、ファッションに関する論集・書籍が相次いで出版されており、ファッションをとりまく状況は少しずつ変わりつつある。

著者: 小林嶺

参考文献

  • 『デザイン TRAVERSES 2』, , ジャン・ボードリヤール編・著(今村仁司訳), リブロポート, 1988
  • 『モードの体系 その言語表現による記号学的分析』, , ロラン・バルト(佐藤信夫訳), みすず書房, 1972
  • 『ファッションは語りはじめた 現代日本のファッション批評』, , 西谷真理子編, フィルムアート社, 2011

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