2017年06月15日号
次回7月3日更新予定

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ジーンズ/Tシャツ

Jeans/T-shirt

19世紀以来、男性の社会的身体はスーツを規範として形成されてきた。身体を明快な直線と滑らかな曲面によって抽象化したスーツは、逆三角形の肉体を示唆し、男性らしさとは何かを視覚的に提示し続けてきた。しかし、ジーンズやTシャツの登場によって、少しずつその規範は変化していくことになる。ジーンズはコットン・デニムで作られたパンツで、アメリカで労働着として長く使われてきた。ジーンズの普及に圧倒的な貢献をしたのがリーバイス社の創始者リーヴァイ・ストラウスで、1873年に、リベットと藍染めという現在のジーンズの基本形となる製品を売り出した。一方、Tシャツは、もともとは下着として使われていたもので、第一次大戦の際、アメリカ軍を通して普及したと言われている。1950年代に、マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンが、映画のなかでジーンズとTシャツを組み合わせて着用したことから、反体制や自由の象徴としての意味を持ち、街着として普及しはじめた。同時に、ミニスカートによって、日常のなかで自由に動かせる足を獲得した女性たちに対しても、ジーンズとTシャツはジェンダーを無化する衣服として受け入れられていった。特にTシャツの表面にグラフィックが展開されるようになると、着用者が自己表現するためのメディアとしても機能しはじめる。ただ、Tシャツ/ジーンズが自由の象徴と言っても、他の衣服同様、身体を可能な限り合理的・効率的に機能させようとする近代的な価値観が染み付いていることに変わりはない。

著者: 井上雅人

参考文献

  • 『性とスーツ 現代衣服が形づくられるまで』, アン・ホランダー(中野香織訳), 白水社, 1997

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