2017年05月15日号
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レコード

Record

19世紀後半に初めて実用化された音響記録複製テクノロジー。音の空気振動を視覚的な図形(波形)として物理的に記録し、その図形に基づいて音響を再現する機械的テクノロジー。記録された元の音を再生産するため、音響記録「再生産」テクノロジーでもある。のちにレコードと総称される音響記録複製テクノロジーは、19世紀後半に発明された――レオン・スコットのフォノトグラフ(1857)、エジソンのフォノグラフ(1877)、シャルル・クロの同様のアイデア(1877)、エミール・ベルリナーのグラモフォン(1887)。それらは音声の記録と復元と大量複製を可能とした。レコードの発明以後、音と音楽をめぐる想像力と実践は大きく変容していく。例えばレコード以降の音楽の多くは、生演奏ではなく録音を本来の存在様態とする「レコード音楽」として理解されねばならない。文学や美術との関連で言うと、レコードは(1)文学作品における音声表象の変形、(2)物質としてのレコードを用いる視覚芸術作品をもたらした。(1)の例にヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』(1886)がある。ここに登場する機械仕掛けのイヴの言葉は、エジソンのフォノグラフが発したものである。このように、何らかの霊的存在や神を前提とせずに発話する存在は、レコード以降初めて想像されるようになったのではないか。また(2)の例として、数枚のレコードを一枚のレコードとして切り貼りするミラン・ニザの《Broken Music》(1963-)や、クリスチャン・マークレーのレコードを使うサウンド・アートがある。レコードは、音や音楽をモノとして扱うことで、音楽と視覚芸術との交錯を開拓したテクノロジーだったと言えよう。

著者: 中川克志

参考文献

  • 『音響技術史 音の記録の歴史』, 森芳久、君塚雅憲、亀川徹, 東京藝術大学出版会, 2011
  • 『レコードの美学』, 細川周平, 勁草書房, 1990
  • 『音楽未来形 デジタル時代の音楽文化のゆくえ』, 増田聡、谷口文和, 洋泉社, 2005
  • The Audible Past: Cultural Origins of Sound Reproduction, Jonathan Sterne, Duke University Press, 2003
  • 『未来のイヴ』, ヴィリエ・ド・リラダン(斎藤磯雄訳), 東京創元社, 1996

参考資料

参考作品

  • 《Broken Music》(1963-), ミラン・ニザ

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