Re-Fortプロジェクトはひとまず終了。

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しばらく時間が空いてしまいました。

実はこの期間、以前ここでも書いた「Re-Fort プロジェクト vol.5」のイベントが行われていて、そのことについて書こうと思っていたのですが、なかなか筆が進まず。こんな時間になってしまいました。書こうと思うことがなかなかまとまらなかったというのが正直なところです。
今回のRe-Fort プロジェクトの概要としては、2009年7月22日の日食の日に、関門海峡を挟んだ二つの砲台跡を使ってイベントを行うというもの。門司(九州)側にある和布刈(めかり)公園の砲台跡から花火師に花火を打ち上げてもらって、下関(本州)側の火の山公園の砲台跡から、それを眺めるという内容でした。火の山以外にもその周辺いろいろな場所に人がいて、それぞれが自分の場所から、カメラで映像を記録していました。このプロジェクトは、アーティストの下道基行が主体となって、戦争遺構に出会うためのプロジェクトとして既にこれまで4回行われているもので、今回は初めて関東近郊以外にある遺構での開催となります。僕自身は、Maemachi Art Centerの一員として運営側でこのプロジェクトに関わっていました。

今回は、前日の7月21日から参加者を集め、実際の打ち上げ現場を見学にいく"遠足"を企画したり、砲台に関する知識を知ってもらうための"クイズ"を企画したりして、ユースホステルに泊まり込み、翌22日午前中に起こる日食にあわせて打ち上げられる"花火の撮影"に臨むというプランでしたが、集合日となった7月21日が中国地方を中心に豪雨に見舞われ、交通機関は麻痺。主催者メンバーですら集合時刻から4時間遅れでの到着となる有様で、計画していた遠足はごく一部の人だけしか参加できませんでした。

それでもなんとかクイズ等のプログラムを消化し撮影当日に臨みました。下関における日食の食分(日の欠ける深さ。1で最大)は、およそ0.89。完全に太陽が隠れてしまう皆既日食ほどの暗さではありませんでしたが、ただの曇りとは全く違う、異様な光に包まれた感覚がありました。周囲は少し肌寒くなり、蝉も一瞬鳴き止んだところもあったようです。そして10時56分。最大食分になった瞬間、お椀をひっくり返したような形の和布刈公園の山頂から、薄暗い景色の中で打ち上がった花火は、異様な光景でした。「ドンッ!」という花火の爆発する音は深く響き、合計25発がすべて打ち上がるまでの1分間は、本当に一瞬で終わりました。

今回の日食が観測できるエリアと、第二次世界大戦中日本軍が提唱した大東亜共栄圏のエリアが符合していたことや、砲台の火薬と花火といった符号、空撮のためにチャーターしたヘリコプターの姿や音といった要因が、背景としては戦争と今回のプロジェクトをつなげる役割になっていますが、それが最終的にどのような作品になるのか、ということはまだ分かりません。とにかくその時刻に打ち上がる花火を、35人の人数で同時に撮影したということは事実で、それらの素材がいま手元にあります。これを使ってどうするのか、下道、およびプロジェクトのメンバーで、現在プランを話し合っています。

どんなものになるのかは分からないけれど、あの場所に(大変な思いをしながらも)自分の体を持って来て、一緒に時間と場所を共有出来た人たちに、まずは感謝しています。そして、いつかこの作品を目にする人たちが居るなら、どういう風に感じてくれるのだろうか、自分自身もとても期待しつつ、同時にプレッシャーを感じています。

この話題はまだ引き続きそうです。今回はこの辺で。
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今日は東京神宮の花火大会です。花火の音を聞きつつ、山口についてartscape編集部から初エントリー。そろそろ展示もはじまるようですが、DVD販売もしっかりやって経済的にも自立したプロジェクトに仕上げてください。

はじめてコメントします竹久侑です。
(まだ、アカウントがのこっているんですね〜)

さて、私も参加者のひとりとして参加してきたRe-Fort vol.5。

今回のプロジェクト、わたしにとって、花火の打ち上げの「あの場/あの時」は本当に一部にすぎず、前日の砲台跡への遠足に始まり、宿泊、日食/花火をへて、最後、急遽開かれることになった締めのミーティングまで、の一連の流れがとても重要でした。

参加者それぞれ、Re-Fortが扱うところの戦争というテーマに対する思い入れにけっこうちがいがあるようでした。もともと、遊びの要素を意図的に強くしたチラシだけで今回のプロジェクトを知った場合、これがまじめなプロジェクトだとはあまり想像しないでしょう。

メンバー5人が婉曲的に扱っていた、この戦争というデカすぎるテーマについて、きちんと話しあわれる場がないままプロジェクトが終わろうとしていましたが、予定外に開かれることになった、締めのミーティングの場で、まるで気持ちを暴発させるように、語りだした参加者たちの感想がいまもとても心に響いています。

今回のRe-Fortは、参加者それぞれに持参のカメラで花火のシーンを撮影してもらうことで、「傍観者から当事者へ」と意識を移行させました。そのことで、距離感をもって認識していた戦争というデカすぎるテーマに対して、もはやメンバーだけでなく参加者もが、一定の距離感を保てなくなり、結果、直接的に対峙することになりました。

「楽しかった」だけでは済まされない当事者としての立ち位置は、参加者にも気持ちや考えの整理の必要性を呼び起こしました。
そのことが、Re-Fort vol.5の一番の醍醐味だったように思います。

展示として再構成されたあのプロジェクトが、あの場を共有していない人びとにどのようにコミュニケートしていくか、とても興味津々です!

見に行けなくて残念。。。


ブロガー

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