三重のレジデンススペースAPOC

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今回は三重県の紀北町にあたらしくできた古民家をリノベーションしたレジデンススペースをご紹介します。レジデンススペースといってもアーティスト・イン・レジデンスを主目的にしたいわゆるアートスペースではなく、熊野古道にも近く、伊勢湾も目の前に広がるという豊かな自然環境を備えた地理的条件を売りに、主に田舎暮らし体験などを提供するような場所です。アーティスト・イン・レジデンスは、どちらかというとそういう田舎に新たな人や価値観を持ち込むきっかけのように捉えられているようです。

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現在鋭意改修中という"ゆうがく邸"という築50年ほどの民家を、田舎暮らしを考える方のお試し滞在や、熊野古道の文化が息づく土地で滞在制作を行いたいアーティストのレジデンスとしてオープンするそうです。僕が訪問した1月はまだまだ改修中でしたが、ちょうどプレオープンのイベントとして、アーティストを招いたレジデンス事業を実施しており、招かれたアーティストが以前の職場で僕が担当したプロジェクトで招聘したイギリス在住の映像作家アマンダ・ベランタラさんだったので、どんなプロジェクトを実施しているのか気になったこともあって伺ったのでした。ちなみにアマンダは映像人類学を学んでおり、映像を用いて人や社会の所作や関係を探るような作品を制作しています。彼女は人の営みにより生成される音や環境音に非常に興味を持っており、そういう音を収集してサウンドスケープ(音の風景)をつくり出していきます。
1月26日に彼女のプレゼンテーションが駅前の町民ホールのようなところで開催されたのですが、まさに地元の方が40名近く集まっていました。いわゆるアートのための集まりではなくて、ほんとに近所の人が自分が関わったり、あるいは単純に興味があるからという自然な欲求で集まってるっていうのは自然でいいなあと実感しました。みんなアーティストをナチュラルに受け入れていて、そういうコミュニティのあり方って面白いです。

02prsen.jpg↑プレゼン兼上映会の様子です。

ちなみに今回アマンダはたった2〜3週間程度の滞在だったため、とにかくさまざまな音を収集し、それをつなげた映像を見せてくれたという感じです。彼女の作品として成立するにはもう少々時間が必要そうです。ただ、紀北町のあたりは熊野への入口ということもあって、自然と信仰がすごく当たり前のこととして生活の中にあるというのが、彼女の収集した様々な人の営みの音から見えてきたのはよかったです。また夏頃再度紀北町に滞在する予定だそうで、そのときに作品として完成することを期待しています。

03amanda.jpg↑アマンダです。彼女はアメリカ人ですが、メキシコのプエブロ(アメリカ先住民族のいわゆるインディアン)の血も入っているそうで、そういうことも影響して人類学を学んだのでしょうか。

記述するのを忘れていましたが、このプロジェクトを運営しているのはNPO法人ア・ピー ス・オブ・コスモスさんという団体でした。ここの事務局に僕の前職の秋吉台でインターンしてくれていた西田和美さんという方が働いている関係で、今回のア マンダ・ベランタラのレジデンスは実現したんですね。
NPOの詳細は下記ウェブサイトをご参照ください。
http://apoc-mie.org/

ちなみに今後レジデンスとなる民家はかなり素敵だったので、せっかくなので写真でご紹介します。

04entrance.jpg↑エントランスより2階建ての建物で、2棟を接いでいます。もともとは長屋形式だったようで、奥に広がっています。

06inside_entrance.jpg↑玄関を入るとこんな感じで、まさに建築中です。

05fromcourt.jpg↑裏手に抜けると、これから庭になるだろう広場があり、建物の奥行きもよく分かります。

↑1階のキッチン側より広間を見ると大工さんが作業してます。囲炉裏?

08pass2f.jpg↑2階の通路です。左手に個室が4〜5部屋くらいあります。広いんですよね。

09room2f.jpg↑2階の広間。欄間もいいです。

10room2f.jpg↑個室はこんな部屋もありました。

07secondfloor.jpg↑最後に2階の窓からです。下宿屋的な感じで、アーティストだけのレジデンスとは全く違って、異なった価値観の人が集まる場になり、そこからなにか新しい視点の考え方を発信できていくと面白いなと思います。
個人的には色々考えるところもあって、ほんとに行ってよかったと思える場所です。ありがとうございました。

ブロガー

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