私の家の話

約1年前の話になりますが、日本の建築について何か話をしてくれないか、という依頼があり10分にも満たない簡単なプレゼンテーションを行ったことがありました。それは、リスボンで開催された日本の現代建築展におけるskypeを利用した日本人建築家によるプレゼンテーションのイントロとしての発表でした。私の後で発表されていく日本の建築家の方々の作品を見る上で、何か理解の助けとなるような話ができないかと考えました。発表まで3日程しかなく、何か大掛かりな発表を準備するには時間がなく、いろいろと考えた挙げ句、建築にまつわるごく個人的な話をすることで、日本社会の一端を紹介することができないかと考えました。

タイトルは、「A História da Minha Casa」、「私の家の話」としました。最初に、日本の白地図に「東京」と私の出身地である「福岡」に赤い丸印をつけたものを見せ、自己紹介しました。これは東京とは異なるリアリティが存在する可能性を見る側に最初に感じさせておきたいと思ったからです。

次に、私の家族写真を2枚見せました。1枚は玄関先で私たち兄弟が写ったもの、2枚目は家の居間で家族や親戚が集まって撮った集合写真です。私はこれらの写真を使って日本家屋の特徴をいくつか説明しました。つまり、玄関には段差があり、そこで靴を脱ぐ必要があること、玄関の扉は引き戸になっていること、家のなかでは床に座ることなどです。最後に、この家はもう存在しません、と付け加えました。

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各国の住宅の平均寿命を示した表を見せました。先ほどのごく個人的な話とは対照的に、客観的なデータです。日本の住宅寿命は約30年であり、私と同世代の内、半分は自分の生まれ育った家をなくしていることになります。そこからさらに日本家屋の特徴を説明するために、図面の存在しない私の生家の間取り図を、リスボンの自宅にある数少ない写真と記憶を手がかりに描きました。

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このプレゼンテーションは、私が今考えているポルトガル建築展の思考と重なる部分があります。人物が主役となる「家族写真」を手がかりに、その背後に写る「家」について説明しています。そして、「私の家」という個人的な話を手がかりに日本社会という建築の立つコンテクストを紹介しているからです。

今回の展示では「家」、そして「間取り図」というものにも焦点を当てたいと考えています。

ブロガー:志岐豊
2010年10月6日 / 09:23

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