アートをかじこにインストールする

かじこには4人の招待作家の作品がありますが、展示してあるというより、置いてある、あるいはただ、「ある」といったほうが近いように思います。

下道基行さんの写真は、箱に入った状態で自由に手にとって見られるようになっているし、西尾美也さんのふしぎな寝間着・「ねまきっと」は、誰でもいつでも着て寝られるように、カゴに入った状態で目につくところに置かれています。小田さんの音の作品は、まるで本棚に本が収まるようにかじこの廊下に置かれているし、西野正将さんの映像作品は、見えないけどちゃんとあって、人が集まるとパソコンを囲んで上映会がはじまったりします。ほかにも、屋根裏や、玄関先や、ちゃぶ台のうえなどに、さりげなくアートがひそんでいます。

「作品が空間に溶け込みすぎて、無理してでも全部見なくちゃとか、そういう気分にならない」と、ある滞在者の人が話したことがあります。このことを話すのが作家にとって、あるいはかじこにとって、失礼にあたるのか判断がつきかねているという様子でした。かじこのディレクターの一人、三宅航太郎はこの話を聞いて、「僕にとってはとてもうれしい」と言いました。

かじこはギャラリーではなく生活の場であり、お客さんは寝ることを前提としてかじこにやってくる。「寝ることを含めた空間」を踏まえた作品を作家には依頼したし、実際に滞在したうえで制作してもらった、と。

また、「展示」ではなく「インストール」という言葉を彼はよく使います。かじこという「家」の機能のひとつとして、作品=アートをインストールしたのだと。またインストールの対象はアートだけにとどまらない。たとえば「ちょっと変わった冷蔵庫」や「ペットの鈴虫」なんかもインストール、すなわちかじこの一部として取り込むことができる。インストールが完了し、機能が拡張したかじこでの生活は、前より少し愉快に、豊かになる。

アートと冷蔵庫が並列だと言えば誤解を生みそうですが、あえて並列だと実験的に言い切ることで、個人の生活を豊かにすることについてクリアに考えられるような気がしています。夏は暑く秋は寒い日本家屋で、靴を脱ぎ食事をとり人と話をしていると、生活について自然と考えます。それはアートについて考えることとつながっています。

ブロガー:「かじこ|Kajico」管理人
2010年10月6日 / 23:41

1件のコメント

  1. 私もそう思います。生きることとつながってこそだと思います。10月は外に出られなそうなのですが、11月はもうかじこにはいけないかな?

    コメント by 伊藤 — 2010年10月7日 @ 02:45

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