「建築の居場所」を探して、その記録/はじめまして

みなさん、はじめまして。artscape BLOG第10タームの担当をすることになりました川勝です。大学で建築を学んだ後、2008年にRADというリサーチプロジェクトを立ち上げ、京都を拠点に活動しています。RADとは、「Research for Architectural Domain」の短縮形で、直訳すると「建築の領域を調査する」となりますが、僕らはもう少し噛み砕いて「建築の居場所」と呼んでいます。今回のblogでは、現在世界的に見いだされつつある、これまでとは少し違った切り口の「建築の居場所=ARCHITECTURAL DOMAIN」を、リサーチの結果レポートとしてではなく、その過程であるドキュメント=調査記録によって浮かび上がらせていきます。

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20世紀日本はまさに建設の時代であり、その中で建築は社会からの要請に答える形で発展し花開いてきました。しかしながら21世紀も10年が過ぎた現在、建築は社会においてずいぶんと形見の狭い思いをしているように感じます。例えるなら、会社論理の中でばりばりと働き定年退職したお父さんが、にもかかわらず家の中で煙たがられてしまうようなイメージでしょうか(あくまでもイメージですが)。でもそれはお父さんの能力が意味の無いものになってしまった理由ではなくて、それが本当に必要とされている場所を見つけれていないだけかもしれません。
これまで培ってきたスキルや経験は、例えば地域での活動や、福祉の現場などに実はとても有効に生かす事ができるなどということは実際的に例のある事です。そのためには、自分の能力をただしく理解し、それが社会のどのような場所で生かす事ができるのか?をきちんと把握する事が重要ではないでしょうか。それと同じように建築も、建設というこれまで親しんできた居場所から撤退して終わりという事ではなく、今一度自らを見つめ直し、次の一歩を踏み出す先を考えてみる必要があるのではないか。

いいかえると、建築について考える時にこれまでは「建設」という切断面で建築を切り取っておけば社会的にもOKだったし、何も問題は無かったわけです。しかしながら、どのような分野、領域でも言える事ですが、その存在理由や社会的な要請が弱まる時があり、ここ日本においては建築がまさに現在そのような局面をむかえています。その理由はいろいろありますが、みなさんも何となくわかると思うので省略します。ともかく、建設という切断面をみせても、世の中はあまり喜ばなくなっているという事です。ではどうするか、、、。ひとつは、この建設という切断面に磨きをかけ、より美しく、魅力あるものへと進化させていく事です。そうすることで、少なからずこれまでと同じように気に入ってくれる人がいるかもしれません。また、日本とは違う場所へ出かけていって、これまで磨きあげてきた武器で勝負することもできると思います。しかしながら、建築とはたったひとつの側面でしかきりとれないようなものではありません。建築は私たちの生活の基盤であり、また文化や社会の仕組みなどとも密接に関係しています。建てるという行為のみが建築なのでは当然ありませんそれは建てる前も、建った後も存在しています。その中で「建てる」というのは、ほんの一時でしかないのです。なので、(個人的にですが)より魅力的で可能性に富んだアプローチとしては、建築の切断面をたくさん見つけてみる事だと思っています。そのために、一度建築というものを全体としてみてみたい。そのためのリサーチがRADというプロジェクトです。「Architectural=建築的」であるとはいかなる意味においてなのか。そしてそれはどのような「Domain=領域」において有効なのか、を考えていきたいと思っています。

さて、今回のBLOGでは、毎回現在取り組んでいるプロジェクトをひとつ取り上げ、どのようにして始まり、現在に至るのか、そしてプロジェクトで何を考えていたのかを記していきます。具体的には、建築の展示について考え、実践する「rep」、 タウンとアーキテクトがテーマのインタビューサイト「QC3」、 オルタナティブな建築的アプローチのアーカイブ「r-f-r」、若手建築家による国際的なトークセッションイベント「KENCHIKU | ARCHITECTURE」、etc….などのプロジェクについてお話していきます。

次回は9/9からスタートするrep,7「大室佑介/迷宮の匣」のドキュメンテーションと、そこからrepというプロジェクトの生まれた経緯などをお伝えできればと思います。それでは、みなさま、今後3ヶ月ほどの期間ではありますが、おつきあいよろしくお願いします。

ブロガー:川勝真一
2011年9月7日 / 12:41

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