ルイス・ニシザワ・アーカイブプロジェクト──2

パブリック仕様のアーカイブについて知識経験のないチームでプロジェクトをスタートするにあたって、このブログの編集担当者・斎藤歩さんにはデジタルアーカイブのあり方について、テクニカルの細々したことについてはウェブデザイナーの木村利行さんに相談に乗っていただきながら進めています。本当にありがとうございます。

このアーカイブプロジェクトにおけるコンテンツは、次の3つです。

①ドキュメンタリー映像の制作
→本人や関係者へのインタビューを継続中。

②資料の目録作成とデジタル化

③展覧会の実施
→インディペンデント・キュレーターのバルバラ・ペレアとともにアーカイブコンテンツ①②とともに構成するルイス・ニシザワ展を企画調整中。現在、ペレアがすべての作品の所蔵先を調べている。

ここでは②資料目録の制作と資料のデジタル化について、現在の整理状況と課題について書こうと思います。

アーカイブの方法について(資料の目録作成とデジタル化)

資料の種類
ルイス・ニシザワに関して記述されているパンフレットや図録、各賞受賞についての新聞記事、論文、デザイン切手など、ルイス・ニシザワについて記述されている資料。主に、雑誌/新聞/図録/パンフレット/書籍/その他(招待状、賞状、新聞等のコピー)。今後、アルバムの写真や手記などが含まれてくる可能性あり。

ルイス・ニシザワ氏のアトリエ。本来はアトリエの空間全体がアーカイブ対象になるのだと思う。

ルイス・ニシザワ氏のアトリエ。本来はアトリエの空間全体がアーカイブ対象になるのだと思う。

アーカイブの目的
本アーカイブの資料からアーカイブ対象(ルイス・ニシザワ)に関する多種多様な知識・見解・研究が新たに創出されること。そのような知的作業に興味をもつ個人がよりアクセスしやすくなるようなデジタルプラットフォームのモデルを作ること。

アーカイブの用途
ルイス・ニシザワに関する情報を知りたい人のために、将来の資料の紛失・離散と資料内容の転移性を考慮して、正確な文字資料とイメージをデジタルアーカイブする。今後は他の日系人アーティストのアーカイブも追加してシリーズ化できるようにし、アーカイブシリーズ全体を該当機関に委託したい。
そのほか、①ドキュメンタリー映像の付属資料、③展覧会のコンテンツとしても使用予定。

資料収集の方法
ルイス・ニシザワ本人、ご家族や世話係の方からの了解を得て、月に1回程度自宅を訪れ、まずはもっとも資料がまとまっている自宅のアトリエの本棚から探し始めている。ニシザワ氏は毎日アトリエで制作を続けているので、制作の邪魔をしないこと、また体調に差し障らないよう配慮して、アトリエで作業する時間は1回に3時間程度にし、探し出した資料を毎回20冊程度ずつ借りて帰って事務所で作業。現在70冊を作業中。

大体メンバー3人で訪問して、役割分担して手早く探す。2人の後ろに見えているのが作業中の本棚。

大体メンバー3人で訪問して、役割分担して手早く探す。2人の後ろに見えているのが作業中の本棚。

資料の量
写真や手記などこちらからアーカイブしたい資料を伝えて、世話係の方に探してもらっているため、資料の全体量は現在では見えていない。

資料目録の作成プロセス
今後多くのプログラムに応用するために、まずはエクセルでリスト作成。記録する項目については、論文等の参考文献照会に必要な情報のみ作成。

タイトル/巻および号/著者、訳者、編集者/該当ページ/発行元または出版元/発行年月日/ISBN/概要(見出し、記事タイトル、展覧会情報など)/資料の種類(新聞、雑誌など)/資料保管場所(自宅アトリエなど)

なるべく項目を少なくするために、破綻のない程度に項目をまとめ、00001から通し番号をつけた。当初から斎藤さんに、どの資料がどのようなかたまりにあったかも重要だとアドバイスいただいていたので、「資料の保管場所」の項目を追加した。ただし今回の場合は世話係に探してもらうことが多く、現状では各資料のかたまりについて詳細に記録するのは難しいため、”自宅のアトリエ”などの部屋単位で記録している。

文字資料やイメージのデジタル化のプロセス
新聞や雑誌は、表紙と該当ページを家庭用スキャナーでスキャン(300dpi、大判資料は写真撮影)。ファイル名は”年月日_資料名_ページ数”で統一して、1ページにつき1ファイル(jpg)を作成。1冊分をフォルダにまとめ、エクセルリストの目録情報をすべてコピー&ペーストしたテキストファイルを加えてZIP保存。すべてのフォルダはDropbox上に保存している。

現在考えている、次の課題

次のステップでは、これらの資料目録とデジタルアーカイブを、追加や更新しやすく第三者に見せるためのプログラムに移行させることです。
その上で、パイサヘ・ソシアルでは次のような課題と仮定を持っています。

1──将来的に該当機関へアーカイブシステムを委託し、ユーザーへ届けることを念頭においたときに、考えなければならないことは何か?
→方法として、大きく2つの可能性を考えています。
(1)より一般的なデジタルプラットフォーム(容易に管理・メンテナンスできるプログラム)を使って稼働経験があるデジタルアーカイブから知識を輸入し、 メキシコもしくはスペイン語の現状にあわせてプラットフォームを適合させること、その上で経験値のあるシステムエンジニアを断続的に交流させ、ブラッシュ アップしていく。
(2)すでに国際的な規格でポジティブモデルとされるデジタルアーカイブがあるならば、国内外問わずその技術を持つエンジニアに委託し、アーカイブはオンライン上のアクセス、公開に特化する。
また、どのような機関にシステムを委託することが望ましいのか? アーカイブの公開の範囲や、有料/無料によるメリット・デメリットは何か?

2──管理者と検索者にとって使いやすいメディア、またはユーザーインターフェースとは?
→仮にターゲットユーザーを絞り込む必要があるならば、芸術や歴史などの知識を創造し社会に貢献する人

3──今後、あるアーティスト(人物および作品)についての文字や写真などの情報をどのように分類していくか?
→人物別+時系列

4──デジタルアーカイブの利用価値をどのように示すか?
→なるべく恣意のないアーカイブを構成し、情報内容が長期にわたって保管および参照できる状態が利用価値につながる

ただし、上記はいずれも他の課題をクリアしていくなかで変更していく可能性もあります。常に新しい判断なので、見落としている検討事項は何かということが、常に気になります。

メキシコでいくつかのアーカイブ機関を見たり話を聞いたりしていますが、そのデータベースをどのようにユーザーに公開し、活用するのかというプラットフォームづくりに関しては、どこの機関も試行錯誤中のようです。

アーカイブズ学やアーカイブの国際規格が発達して来ている現在、このプロジェクトではそれらの中から何をどのように反映することができるのでしょうか。

このブログを読んで助言をお持ちの方は、ぜひコメントをお願いします。

ブロガー:内山幸子
2012年2月17日 / 21:06

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