Dialogue Tour 2010

第3回:MAC交流会@Maemachi Art Center[プレゼンテーション]

宮城潤/会田大也2010年10月01日号

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プレゼンテーションディスカッションレビュー開催概要

若狭公民館(2006〜)

宮城──前島アートセンターの活動をしていても収入にはつながらないので、専門学校や高校の美術の非常勤講師などをしていました。子どもワークショップなども企画して、那覇市の子ども関係の事業の委員(那覇こどものためのデザイン事業)などもしていた関係で、前島の婦人会の方が「公民館には、講師派遣事業の予算があってワークショップの講師代を出してもらえるみたいよ」と教えてくれて、僕を若狭公民館というところに紹介してくれました。でもその年から講師派遣のプログラムがなくなっていて(笑)、結局受けれなかったのですが、そのときの公民館長が若狭だけじゃなくて広い範囲で地域づくりフォーラムをしたいから話をしてくださいと声をかけてくれました。そんなきっかけで公民館と関係が生まれて、1年間、公民館の非常勤職員となりました。
 公民館は「公立公民館」と地域が共有財産として持っている「自治公民館」の2種類があって、那覇市には社会教育施設として設置されている公立の公民館が7館あります。そのうちの若狭公民館だけが、モデル的に民間から公募による非常勤館長を設置していました。当時の館長が1代目で、僕が非常勤で務めているあいだに、その方が任期切れとなりました。僕はたまたま初代の館長と一緒に仕事をしていたものだから地域の人たちから「宮城さん、あなたやりなさいよ」と言われて、僕が館長になるように署名運動をして教育長に持って行ってくれたんです。僕のためというよりも、前の館長が素晴らしかったので、全然違う人が来たら困るということなんですけどね。ということで逃げられない状況になって、2007年から公民館長を3年間やりました。
 2001年に前島アートセンターを立ち上げたときから私が代表をしていて、2002年の法人化を経て、2006年まで理事長でしたが、公民館長になったということもありますが、前島アートセンターが次のステップにすすむために2007年からは代表を友達に変わってもらいました。栄町市場に引っ越したのが2007年1月ですからちょうどそのころです。


宮城氏

公民館でなにができるのか、一緒に考える

宮城──前島アートセンターで地域と関わりがあったり、学校に行って子どもたちのワークショップを開催したりはしてきましたが、公民館に入るとやっぱり様子が違うんですよ。本当にいろんな層の人たちがいるなと改めて知らされました。地域活動として本当に一生懸命やっている人たちもすごくたくさんいることにも気づきました。公民館ってすごいところだなと思いながらも、でも現状は社会に開かれていないと感じました。僕自身公民館についてよく知らなかった訳ですし。なのでいまはそれを見えるようにしようと思っていろいろ頑張っています。
 まず、公民館の活動のなかで力を入れているのが、広報。公民館のウェブサイトをリニューアルしたのは去年です。公民館に勤めはじめてすぐにブログを始めたのですが、非公式ブログでは限界を感じてこういうふうにつくりかえました。このイラストも可愛いですよね。僕が館長のときに僕を支えてくれていた職員がいま館長になっていて、彼がこのイラストを全部描いているんですよ。専門的に美術やイラストの勉強をした人ではないんですけどね。やっぱりこういう面白い人、実際にいる人をきちんと見えるようにしたいなと思いますね。ウェブサイトをリニューアルして、全国の公民館ホームページコンクールで最優秀賞を取りました。これは自慢なんですけど(笑)、2年に1回ホームページコンクールというのがあるので、とりあえず2カ年間は日本一です。それから、広報紙もなるべく多く出そうと思って、隔月で年6回出すことにしました。他の館は1年に3回くらいですね。また、これまでの広報紙の配布方法できちんと人に届いているのかという疑問があったので、地域の6つの新聞販売店に協力していただいて、無料で4,500部を折り込みで入れてもらい全部で6,000部を配布しています。
 もうひとつ頑張っているのが、若い人向けの取り組みです。僕が館長になった年に、那覇市の公民館では、青年講座・交流事業というものが始まって、若い人向けの取り組みが推奨されました。でもそもそも、若者が公民館に来ないのは、コンテンツ以外にも理由があるのではないか、そんなことを投げかけても、それに答えてくれる人が僕の上の人たちにはいませんでした。それで考えたのが、Wiiで遊ぶという企画です。それは予算ゼロ円で済むので、誰にも突っ込まれずに好き勝手できると思って。人が来たり来なかったりでしたけど、そこに来た人とお話をしながら、どんなことをしたらいいか、なにをしたら面白いと思うか話が聞けると思って。そこでは、若い人は本当に公民館について知らないんだな、ということが明らかになりました。じゃあ、公民館を知らないなら、どんな使い方ができるのかを一緒に考えようと、公民館を知って新しい活用法を考えるワークショップ合宿を企画しました。公民館のなかでライブやVJをしたりとか、自分たちでご飯をつくってカレーを食べたりとか、そんなことを一通り体験して公民館で遊んでみて、いろいろと意見を言ってもらいました。これもまちづくり専門のファシリテーターの協力を得て、自由に意見を出してもらって、いくつも面白い意見が出てきました。そのなかで、自分の力でなにかできること、みんなが簡単に関われるということで生まれたのが、朝食会というイベントです[図8]。誰でも簡単にできるものや残り物でもいいので一品を持ち寄って、食事会をしましょうと。これはもう3年近くやっています。そこに集まってきた人たちがいろいろな情報交換をするんですね。毎回テーマはない。なにもないなかで集まってきて朝食をとりながらおしゃべりするだけなんだけど、そこで話しているなかで生まれてきたものもあります。若狭公民館の近くに海浜公園があってそこの野外ステージが全然使われていないのでなにかしたいという意見があったので、さらにワークショップをしてなにをするかをみんなで話し合って、「100人でだるまさんがころんだ」という企画が生まれたり。そんなことをしています。


8──朝食会風景

プレゼンテーションディスカッションレビュー開催概要

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  • Dialogue Tour 2010とは

宮城潤

1972年生まれ。前島アートセンター理事、アートNPOリンク理事。沖縄県立芸術大学院修了(彫刻)。2000年「前島3丁目ストリートミュージア...

会田大也

1976年生まれ。ミュージアムエデュケーター。東京造形大学、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)卒業。2003〜2014年山口情報芸術センタ...