2017年06月15日号
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Dialogue Tour 2010

第3回:MAC交流会[ディスカッション]

宮城潤/会田大也2010年10月01日号

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目の前にあることを考え続ける

会田──僕はYCAM(山口情報芸術センター)というところで、教育普及という仕事をしています。教育普及の仕事は、美術館・博物館などによっていろいろと異なると思うんですけど、僕がYCAMで働きながら辿り着いた究極の目標というか、コンセプトは、最終的にYCAMの教育普及がなくなっていくのが理想的な状態なのではないか?ということなんです。作品を見ることに慣れている人や鑑賞を楽しむことを知っている人は、見たことがないような作品に出会ったときでも、自ずと鑑賞を楽しむことができてしまうのだろうと思っています。そんな人がいっぱいいる地域では、わざわざ鑑賞の楽しみについて“教育”していくなんて、余計なお世話だろうなと考えているのです。宮城さんが関わった地域へ僕が赴いたとしても、たぶんもうなにもしなくていいんじゃないかと思うような気がします。そのくらいすごく面白いなあと思ったし、地域の持っている多様性と豊かさを感じながら聞いていました。

宮城──市場は、本当に必要ないと思うんです。僕らは栄町市場に移るときに、行く必要があるのかなと思っていたほどです。

会田──なるほど、そうですよね。勝手に面白がっている人はたくさんいるし、別にアートという文脈、つまり解釈や批評といったコンテクストがなくても面白さを見出せる可能性はあるだろうし。その意味で、宮城さんが最初に話していたような「地域活性化のためのアート」みたいなものが、いまはいろいろな地域で実践されていますけど、本当にそれらが、お題目通りの効力があるのか気持ちとしてはちょっとだけ怪しんでいる部分もあります。今日のお話がそれらと圧倒的に違うなと思った理由は、宮城さんが関わっている年数とか、そのコミットメントの深さだという気がしているんです。その場所でずっとやり続ける覚悟がないとできないし、ぱっと来たゲストアーティストが3カ月だけ滞在してお祭り騒ぎをしていくような関係性とは、まったく質の違うことだと思います。

宮城──活動を始めた当初は僕らも地域のためという気持ちでいたし、一方で、そのスタンスに疑問を持っているところもあるなかで、ずっと揺れながらつねに考えながらやっていますね。僕は生まれも育ちも沖縄で沖縄しか知らないし、美術のあり方も自分の見ている範囲しかわからないので、想像できないことや考えが至らないことがいっぱいあるんですけど、とにかく、いま起こっていることや目の前にあることを考え続けるしかないかなと思っています。

会田──本当に頭が下がります。加えて、全体のフレームワークとは別のところで、宮城さんの話を伺っていて、細かな部分に潜むクリエイティビティにも感動しました。たとえば会議に生産性がないなと思ったら現場に行って話しをしてみるとか、時間美術館のコンセプトだけを沖縄に持ち込んでも意味がないよねって言いだすようなことも、あたりまえといえばあたりまえだけど、信頼の構築できていない人間関係のなかではなかなか言いだせない一言だったりするのではと思います。こういう考え方、つまり本質的な部分をきちんと丁寧に詰めて話し合っていくやり方で、いちいち全部進めていくというのが、非常に豊かとしかいいようがない。もしかしたら、宮城さんたちにとって、それはあたりまえのようにやっていることなのかもしれないのですけれど。

宮城──その都度その都度の判断はけっこう悩んだり、悩まなくてあとで後悔したりしますよ。AITと時間美術館をやろうといったときは、みんな敏感なときだったと思います。前島アートセンターが拠点を移すタイミングでもあったし、「沖縄県立博物館・美術館」のオープンにあわせて美術関係者も多く訪れるということだったので、沖縄サイドからなにを発信できるのか。美術館は美術館として展示を企画しているけれども、僕らはなにができるのかということを考えたときに、AITが東京でやってきたことを沖縄でそのまま同じようにやっても意味がない。かといって否定しても仕方がないので、コンセプトに対してお互いに折り合いをつけてなにができるかを考えました。向こうも時間美術館というものが自分たちがそれまでやってきたものとは違うかたちになったのが逆に発見となって面白かったと思うし、こちらも僕らなりの主張ができました。

会田──現場からのリアリティとしての応答、みたいな主張ですね。いがみ合う、という意味ではなく、“ガチンコ”で、アイデア同士がぶつかっていますよね。とてもうらやましい構図です。


会田氏

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  • Dialogue Tour 2010とは

宮城潤

1972年生まれ。前島アートセンター理事、アートNPOリンク理事。沖縄県立芸術大学院修了(彫刻)。2000年「前島3丁目ストリートミュージア...

会田大也

1976年生まれ。ミュージアムエデュケーター。東京造形大学、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)卒業。2003年より、山口情報芸術センター[...

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