現代美術用語辞典 1.0

「セザンヌ回顧」展

Paul Cézanne
2009年01月15日掲載

1995年秋、パリのグラン・パレでの開催を皮切りに、テート・ギャラリー、フィラデルフィア美術館を巡回。1936年以来のこの大回顧展は、1895年ヴォラールの画廊で行なわれたセザンヌの初個展から100周年を記念したものである。展覧会を指揮したのは、フランス美術館総監のフランソワーズ・カシャン。近年各地で企画開催された、特定の時代に絞った、あるいはテマティックな展覧会とは一線を画して、セザンヌ作品の全容を示す意図で世界各地から集められた約100点の油彩画を含む、素描、水彩画合計約220点で構成。出品作を、制作の年代順に4期・五つのセクションに分け、さらに静物画、風景画、人物画というジャンルに細分した展示を行なった。初個展以来、20世紀をほぼ包含するこの100年で、彼の作品をめぐる言説は一種の飽和に達したとも言える。この回顧展は、選択の批評性を回避した構成をとることで、セザンヌに特定の意味を与え続けた挙げ句、行き詰まりの観を呈する美術史の状況をいったん逃れ、新たな地平を開くための、ひとつのメルクマールとして機能すべき意欲を担うものとして企画されたとも言える。いずれにせよ、これほどまとまったかたちでセザンヌの作品に向かえるのは希有な経験であり、彼を展望する貴重な機会を提供したことは事実であろう。

[執筆者:井伊あかり]

現代美術用語辞典 2.0

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