現代美術用語辞典 1.0

新表現主義

Neo Expressionism
2009年01月15日掲載

禁欲的・観念的な画風が支配的だった70年代から一転、80年代に入るや否や、荒々しい筆致や激しい色の対比を特徴とする絵画が登場する。この国際的な傾向は当初「ニュー・ペインティング」と呼ばれていたが、いつの頃からか、そもそもはドイツやイタリアにおける同種の動向を示すために創案された用語「ネオ・エクスプレッショニズム」が“世界標準”としてとって代わった。同じ動向を指すのに「ネオ・エクスプレッショニズム」のほうが適切なのは、「ニュー・ペインティング」という呼称があまりに漠然としているのはもちろん、70年代以前の「コンセプチュアル・アート」や「モダニズム」、さらには禁欲的な「ミニマリズム」に対する反発や、「アレゴリー」を取り入れた手法に、より適切に対応しているからであろう。その手法の一部は、20世紀初頭の表現主義にまで遡ることができるものであるが、数多いる作家のなかで、この点に関してとりわけ示唆的なのはA・キーファーではないだろうか。

[執筆者:暮沢剛巳]

現代美術用語辞典 2.0

▲ページの先頭へ