現代美術用語辞典 1.0

崇高

Sublime
2009年01月15日掲載

古くは偽ロンギノスの議論が有名だが、近代におけるこの語の用法は、E・バークを受けてカントが『判断力批判』で展開している議論の影響を受けている事が多い。いずれにせよ、聖書の「光あれ」がしばしば例に引かれることからも、精神的な価値の「高さ」が主題になっていることがわかる。カントの議論は複雑なものだが、概略的には、巨大な対象を目前にした時に生じる、構想力(想像力)と理性の不調和による苦痛が、そうした対象をなお超えてある理念を思考させ、そのとき理性がより高次の快を得る、というものである。また、ここでは理念の崇高さが国民の道徳性を高める、という主題も現われていて、美学と政治の接点で生じる諸問題がその危うさも含めて焦点になっている。現代美術の文脈においてはB・ニューマンのエッセイ「崇高は今」が有名である。R・ローゼンブラムが抽象表現主義を「抽象的崇高」と述べたこと、J=F・リオタールがニューマンの問いをカントの崇高論と接続したことは記憶に新しい。

[執筆者:石岡良治]

現代美術用語辞典 2.0

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