現代美術用語辞典 1.0

モビール

Mobile
2009年01月15日掲載

1932年、A・カルダーは針金を折り曲げ、微妙なバランスを実現した空間彫刻をパリのヴィニョン画廊で発表、この実験に注目したM・デュシャンが命名した「モビール」が、以後このアメリカの彫刻家が展開した空間彫刻の名称として定着する。カルダーがこのような表現を試みたのは、P・モンドリアンや「構成主義」の影響を、自分なりに消化しつつ三次元へと発展させ、なおかつそれを低予算で実現しようとしたためであった。軽妙な雰囲気のうちにも先端の動態学(キネティクス)を彷彿とさせる作品は、多くの画商や評論家からも支持を受け、この成功によってカルダーは、戦後巨匠のひとりとして数えられるようになった。「モビール」を建築的なスケールにまで拡大した「キネティック・スカルプチュア」は、一貫してこの表現形態にこだわり続けたカルダーの真骨頂と言えよう。

[執筆者:暮沢剛巳]

現代美術用語辞典 2.0

▲ページの先頭へ