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学芸員レポート

新青森駅東口駅前広場モニュメント、中西信洋《雪まち──Aomori Reflection》に決定/AIR 2010・反応連鎖 Platform2 〈ツナガルシクミ〉

日沼禎子(国際芸術センター青森)2010年10月01日号

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 東北新幹線新青森駅開業が12月4日に決定。交流人口の増加、産業・経済の振興などが期待され、現在さまざまな取り組みがなされている。この度、新駅整備のため、同駅の整備コンセプト「雪を知り、豊かでほっとする自然環境、おおらかで個性的な駅前広場」をもとに、駅に降り立った来訪者に雪国青森を強く印象づけるため、降雪を造形に組み込んだモニュメントを募集。2009年11〜12月までの作品公募、今年4月に行なわれた審査の結果、中西信洋による《雪まち──Aomori Reflection》がモニュメント作品に決定した。量感のある彫刻としてではなく、ステンレスの鏡面に四季折々の風景が映し出され、人々が空間に誘い込まれるようなアイデアが、高く評価された。中西は、2005年、国際芸術センター青森(ACAC)のレジデンシーアーティストとして滞在。このたびの作品制作にあたっては、青森での滞在制作の経験が大きく活かされている。作品設置の打ち合わせのために来青した中西に、ショート・インタビューを試みた。


《雪まち──Aomori Reflection》。高さ3m、直径5mの円柱を半分に切り取ったような形状を組み合わせている

──まずは最優秀作品への選考おめでとうございます。どのような作品かコメントをお願いします。

──屋外のパブリックアート作品を制作することは初めて。自分にとっての大きな挑戦となります。《雪まち──Aomori Reflection》は、野外作品でありながら、通常のモニュメントのように物を置くのではなく、取り囲まれる空間です。作品の前に立ったり通り過ぎていく人が、ステンレス壁の鏡面に映り込み、ドローイングの中に入り込むような感覚になります。壁には「ストライプ・ドローイング」のエッチングを施していて、冬は雪の、夏は空や緑の風景が映り込み、そこに立つ人とドローイング、周囲の環境とがレイヤーとなって現われます。また、壁面の上部は赤くペイントします。青森にはねぶたや縄文文化から、火、赤のイメージが連想されます。上空からこの作品を眺めれば、半円を組み合わせたシンボリックな赤い線が見えるはずです。

──2005年にACACに約2カ月半滞在しましたが、今回その経験はどのように活かされたのでしょうか。

──ACACでの経験は、自分にとって大きなターニングポイントとなりました。青森という土地は、僕の出身である九州、現在暮らしている大阪ともまったく違い、圧倒的な自然が存在しています。そして、人々の生活のなかにも自然の力が多く入り込んでいる気がします。僕にとって青森は、「空」と「森」のイメージ。それは2005年に制作した作品でも表現しています。そしてなによりも、柔らかな「光」。今回の作品でも、そうしたものの中に包まれるような、空間に触れることができる作品にしたいと思いました。

──人々の出会いの場となる駅。どのように作品と出会って欲しいですか。

──青森は地理的にも特別な場所。山と海に囲まれ、さまざまな物がせめぎ合う場。そして多くの未知のもの、古いものが残されています。特に方言、言葉もそうですね。多くの情報に囲まれている現代にあって、このような場所がまだ日本にあるということはとても素晴らしいことだと思っています。僕自身は初めてここを訪れたときの驚きと、滞在制作という、外側と内側からの両方の視点を持っていますが、《雪まち──Aomori Reflection》は、あくまで外からの印象を表現しています。新駅に降り立った人が、この作品に映し出される風景とともに、青森との出会いに新鮮な驚きを感じてもらえたら嬉しいです。


《レイヤー・ドローイング 雲》(ACACでの展示風景、2005年)。1m四方のフィルム100枚を使い、パノラマの風景を空間に配置した作品を制作

[インタビュー:2010年9月7日]

中西信洋(なかにし・のぶひろ)
1976年、福岡県生まれ。1999年、東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻卒業。2001年、京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻卒業。2005年、国際芸術センター青森AIRプログラム「かわりゆく世界で」に参加。ドローイング、インスタレーションなど、連続する線や空間による独自の視覚化を試みる作品を制作。現在大阪を拠点に、個展、グループ展など国内外で活躍中。


中西信洋

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日沼禎子

1969年生まれ。女子美術大学准教授。 国際芸術センター青森(ACAC) 学芸員、 ARTizan プログラム・ディレクター、 空間実験室 ...

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