artscapeレビュー

『イヴ・サンローラン』

2011年06月01日号

会期:2011/04/23

ヒューマントラストシネマ有楽町[東京都]

2008年に亡くなったイヴ・サンローランのドキュメンタリー映画。公私共にパートナーだったピエール・ベルジュによる回想をとおしてイヴ・サンローランのクリエイションの真髄に迫る。私邸を彩る数多くの美術品に瞠目させられたことはたしかだが、しかしデザイナーとしてのイヴ・サンローランを孤絶感に集約する演出はいかにも凡庸で、耽美的な音楽も単調極まりない。ファッションやアートにかぎらず、あるいは非言語表現や言語表現にかぎらず、何かのものを創り出すクリエイションとは、本来的に孤独であることは誰もがすでに体験的に知っているのだから、それをいまさら強調されても困ってしまう。それゆえ、映画をとおして浮き彫りになるのは、イヴ・サンローランへ注がれたピエール・ベルジュの愛だけであり、あまりにも一方的な愛の告白が映画の全編にわたって満ち溢れていることを思うと、これはむしろピエール・ベルジュのドキュメンタリー映画というべきかもしれない。

2011/04/27(水)(福住廉)

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