artscapeレビュー

ゴーゴーミッフィー展

2011年06月01日号

会期:2011/05/03~2011/05/15

大丸ミュージアム梅田[大阪府]

誰しも子どものころ「うさこちゃん」の絵本に一度ならずとも親しんだだろう。本展はそのミッフィー生誕55周年を記念し、初期から近作まで8作の絵本原画やスケッチなど、約200点の日本初公開作品が展示された。たんなる有名絵本作家としてではなくて、グラフィック・デザイナーとしてのディック・ブルーナの本領を充分に堪能できる展覧会だ。父が経営する会社で手掛けた、ペーパーバック《ブラック・ベア》シリーズの装丁とポスター・デザインの数々。簡潔にして目をひきつける、ヴァラエティに富んだ作品には目を瞠らされる。手掛けた装丁は2,000冊余り。彼はいつも作品をすべて読了してからデザインをしたという。そのとおり、小説の作品世界を端的に且つ暗示的に表現しながら、読者が自由に想像力を働かす余地を残している。アート・ディレクターの職を辞した後、絵本作家となったが、彼の信条は変わらない。絵本の判型はすべて正方形、使われる色彩は6色のみ、考え抜かれたうえで描かれた黒い輪郭線。極限に単純化された線にはかすかに震えるような手の跡が見え、ミッフィーたちのわずかな表情の変化さえも描き分けている。「デザインはシンプルであることが一番大事。完璧であるだけでなく、できるだけシンプルを心がける。そうすれば見る人がいっぱい想像できるのです。これがわたしの哲学。」これはブルーナの言葉。うさぎ年生まれの彼に、これからもまだまだ頑張ってほしい。[竹内有子]

2011/05/11(水)(SYNK)

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