TOKYO STORY 2010:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

TOKYO STORY 2010

2011年07月01日号

会期:2011/04/28~2011/05/28

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

トーキョーワンダーサイトが主催するクリエイター・イン・レジデンス・プログラムで招聘または派遣したアーティストの活動を紹介する展覧会。国内外11人による作品が展示された。抜群だったのが、台湾に滞在して作品を制作した岩井優。現地の日本式住宅を舞台にした映像作品を空間インスタレーションとして発表した。壁に大胆に穿たれた大きな丸い穴をくぐりぬけると、赤く塗り上げられた室内に映像作品が置かれている。その映像は男女2人が丁寧に折り畳んだ布で家屋の床や柱をふくというものだが、これは近年の岩井が熱心に取り組んできた「クリーニング」の延長線上にあることは一目瞭然だった。ただ、これまでと比べて明らかに異なっていたのは、過剰と思えるほど耽美的な映像美。白い泡にまみれた手先の動きはエロティックですらあり、どうにも違和感を拭えない。ところが映像の終盤で、その布が広げられると日の丸と台湾の国旗であることが判明したから、この美とエロスが充溢した映像は日本と台湾双方における耽美的な愛国主義を暗示していたとも考えられる。だとすれば、ここで岩井が洗い出しているのは、台湾の土地に建造された日本式住宅に眠る植民地主義の痕跡と同時に、国民国家という人工的なフレームにいまも呪縛されている私たち自身なのかもしれない。このたび岩井優が到達したのは、美しさを耽溺する審美主義などではなく、台湾と日本に通ずる政治的社会的文脈だったわけだ。それを巧みに表現して見せたところに、現代社会が抱える同時代の問題に真摯に向き合うアーティストの誠実な態度が現われている。赤い室内から出て振り返ると、白い壁の中央に開けられた赤い丸は日の丸そのものに見えた。

2011/05/25(水)(福住廉)

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