2018年10月15日号
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artscapeレビュー

ミミトメ『マゴビキ、あるいは他人の靴の履き方』

2011年07月01日号

会期:2011/06/18~2011/06/25

SPACE雑遊[東京都]

2人1組でテーブルごしに向き合う観客は、イヤーフォンから課せられる指示にしたがって行動する。本作の特徴は、観客の行動が作品の大きな構成要素となるという点。ただしそれは「観客が役者になる」のとは異なる。むしろ、観客に役者をあるいは演技を極力与えない芝居と考えたほうがいい。観客は、指示通り、目の前のボードにある景色(俯瞰したそれは山間部で、真ん中に菱形の湖がある)の上で小さな人形を移動させ、その都度、耳に入ってくるその場所にまつわる語りを聞く。要は、役者が人形に、舞台がボードになっており、そのぶん、役者や舞台美術から喚起されるイメージが最小化されているのだ。役者がまったく不在というわけでもない。テーブルの周りで、耳から聞こえてくるエピソードにちょっとだけ関連する(けどほとんど関係ない)芝居を2人の役者が演じていた。けれども、ここで大事なのは、演技が与えられていないということのはずで、それによって観客は、語り以外はきわめてミニマルな要素だけをたよりに、場所のありさまやそこでの出来事を想像することになる。役者が極力あらわれないことによる効用は、想像力を刺激する語りだけでとんでもなく非現実的なシーンでも出現させられるところにあるだろう。けれども、ミミトメ本人たちはそこにあまり執着がないようで、語りの中身に奇想天外ななにかはなかった。そのぶん、観客に「演技を与えない」という仕掛けだけが、さまざまな可能性を残しつつ、宙づり状態になっていた。

2011/06/25(土)(木村覚)

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