2018年10月15日号
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artscapeレビュー

ダーレン・アロノフスキー『ブラック・スワン』、周防正行『ダンシング・チャップリン』

2011年07月01日号

会期:2011/05/11、2011/04/16~

たまたま日本では同時期の公開となった二作、「バレエを扱った映画」という以外にも両者には共通点があった。どちらも、前半に本番にいたるまでの出来事、後半に本番が上演されるのである。もちろん違いもある。『ダンシング・チャップリン』は、実在のダンサーたちが実名で登場するドキュメンタリー、故に本番はそのままバレエ作品の映画化であるのに対して、『ブラック・スワン』は純粋なフィクションである。ただし、極端に近い位置から主人公をとらえる『ブラック・スワン』のカメラは、主人公の本番初日までの葛藤に恐ろしいほどリアルに迫っており、対して『ダンシング・チャップリン』では、本番ぎりぎりでダンサーが入れ替わるなど、予想を超えた出来事が起きる。フィクションはバレエリーナの心理を濃密に描き切り、ドキュメンタリーは嘘のような本当の話で観客をバレエが生まれる現場に引き込む。どちらにしても面白いのは、前半の部分が後半の本番を見るための必要不可欠な要素になっているところだ。リハーサルや舞台の外の出来事込みで見せることで舞台作品は舞台単独では出ない力を出すことが可能になる。ただし、その力を有しているのは、舞台芸術というよりは映画というべきだろう。その多くが本番の上演のみならず上演までの顛末を描いた「バックステージもの」であるミュージカル映画はその好例に違いない。どちらの作品もまるでそうした「バックステージ」もののように、バレエの魅力を映画固有の力によって引き出していた。

映画『ブラック・スワン』予告編

映画『ダンシング・チャップリン』予告編

2011/06/25(土)(木村覚)

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