artscapeレビュー

瀧本幹也「LAND SPACE」

2011年09月15日号

会期:2011/07/16~2011/08/28

MA2 Gallery[東京都]

瀧本幹也の爽やかで意欲的な展示だ。2009年から5回にわたって撮影したというフロリダ・ケネディ宇宙センターのスペースシャトルのシリーズには、「宇宙少年」の夢が結晶している。5キロ以内に近づくのは禁止されているため、音に反応してリモートコントロールでシャッターを切る装置を使って、発射台から500メートルの地点から打ち上げの様子を連続的に撮影しているのだという。スペースシャトル計画が終焉を迎えた今、記念碑的なシリーズになるのではないだろうか。ぜひアメリカでの展示を実現してもらいたいものだ。
ただ、ノイズをすべてカットして、ピカピカのロケットや建築物、発射台の内部などに焦点を絞った作品の選択は微妙なところだろう。もう少し宇宙に挑む人間たちの生々しい営みも見てみたい気がした。完璧な“絵”をめざすあまり、瀧本自身の立ち位置も含めて、宇宙計画を推進する過程につきまとう、どちらかといえば子どもっぽい欲望や衝動の部分が見えにくくなっている。広告を中心として仕事をしてきた写真家にありがちな「小綺麗にまとめてしまう」弱点が出てしまったようにも感じる。
2階のスペースに展示されていた「LAND」のシリーズにも同じようなことを感じた。フレームが凝っていて、左右に内側を照らし出すLED照明が組みこまれている。面白いアイディアなのだが、白っぽい光が強過ぎてむしろ画面が見えにくくなってしまった。そもそも「SPACE」と「LAND」という組み合わせにあまり必然性がないのではないか。スペースシャトルから見た地球の“皮膚”の眺めを、標本のように提示するということなのだろうが、やや理に落ち過ぎた嫌いがある。二つのシリーズは切り離して見せた方がよいのではないかと思った。
なおLOUIS VUITTON六本木ヒルズ店でも、同時期に瀧本の新作展「LOUIS VUITTON FOREST」(7月29日~8月31日)が開催された。やはり「まとめ過ぎ」という感はあるが、こちらも時間をかけた意欲作である。

2011/08/13(土)(飯沢耕太郎)

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