2017年11月15日号
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artscapeレビュー

城戸孝充・天方信吾

2011年11月01日号

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会期:2011/09/08~2011/10/02

gallery 21 yo-j[東京都]

城戸孝充と天方信吾の二人展。城戸が制作した立体作品に、天方による音をあわせた《まだ、雨は降り続いている》を発表した。彫刻を出自とするアーティストは数多いが、城戸ほど毎回趣の異なる作品を見せて鑑賞者を圧倒する美術家はいない。今回の立体作品は、鉄板を貼りあわせた重厚な土台の上に細長い真鍮を無数に突き立てたもの。鈍い金色の線が垂直方向に幾重にも重なり合った光景は、密集した竹林や降り注ぐ雨を連想させるが、雨音をモチーフにした音響が徐々に大きくドラマティックに展開すると、その光景がモアレ状に見え始め、一点を見通すことができないほど、視線が撹乱される。その斑紋の先に、見えるはずのない世界が見えたような気がしたから不思議だ。森のなかで不意に雨に打たれ、風雨が山肌を削る音を耳にしながら、岩陰で身を潜めて堪え忍ぶ時間。おのずと動物的な感性が研ぎ澄まされる。やがて大音響が去っていくと、雨上がりの森の静けさが身にしみてくる。画廊の天窓から差し込む穏やかな光も、雨雲と樹木を突き抜けて下りてきた陽射しのように見える。むろん、音の力を借りてはいる。そうだとしても、これほどまでに物体の造形から見えない世界を想像的に体験させる作品は、他に類例を見ないのではないだろうか。城戸孝充が切り開いている彫刻のフロントは、いまもっとも注目すべきトピックである。

2011/09/30(金)(福住廉)

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