artscapeレビュー

篠山紀信「Before-After」

2011年11月01日号

会期:2011/09/10~2011/10/22

hiromiyoshii roppongi[東京都]

篠山紀信の写真展。ヌードの女性たちを明暗、陰陽、清濁などの二項対立によって撮影して、それらを2点一組にして展示した。一見して気がつくのは、明るい写真に篠山の「らしさ」が存分に表われているのに対して、暗い写真には不自然なほどのあざとさがあるということ。果物の果汁を血飛沫のように見せたヌード写真などには、どこかで見たような既視感が漂っているし、とりわけエロスも感じられない。その反面、3人のヌードモデルが無邪気に笑いながらじゃれあう写真には、乾いた虚無感と狂ったエロスが充溢している。後者の路線を猛進していけばよいものの、なぜ前者との両輪を選んだのか、ほとほと理解に苦しむところだ。そうした二項対立の図式に則ることが「アート」の条件であると考えているのかもしれないが、わざわざ暗い写真に挑戦しなくとも、篠山紀信の明るい写真にはすでに「アート」が内在しているのではないだろうか。

2011/10/13(木)(福住廉)

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