2017年12月15日号
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artscapeレビュー

光と照明による能舞台の陰翳 WORK♯06 新作能「水の輪」

2011年11月15日号

会期:2011/11/11~2011/12/12

山本能楽堂[大阪府]

大阪で一番古い能楽堂、山本能楽堂で昨年の10月から、LED照明デザイナーの藤本隆行氏とのコラボレーションで「光と照明による能舞台の陰翳」というシリーズの能公演が行なわれている。これは、能楽鑑賞の初心者向けに山本能楽堂で定期的に行なわれている夕方の公演のひとつで、はじめにシテをつとめる山本章弘氏による詳しい演目解説があり、終演後には客席の声に応える質疑応答の時間も設けられたユニークなプログラム。LED照明の演出で能を鑑賞するというこのシリーズでは、これまでに「葵上」「安達原」「葵上」「鉄輪」「鵜飼」「土蜘蛛」が上演されている。この日は「水都大阪2009」での初演以来、ときどき再演されている新作能「水の輪」が演目だったのだが、水鳥をかたどった井上信太の作品も舞台美術として使われていて、ことさら特殊な公演だった。環境問題をテーマにした物語の舞台は川。真っ暗ななかでLEDの光が舞台や舞台脇の水鳥に当たり、周囲をうっすらと青白く照らす様子が幻想的な雰囲気で、水辺の景色のイメージがすんなりと頭に浮かび、物語に入り込みやすい。特に感動したのは地謡、太鼓、笛などの演奏、音の迫力だ。暗闇から響く音や声の臨場感がすごい。客席と舞台との距離がとても近いというこの会場の特徴のせいもあるだろうが、LEDの演出の影響の大きさを感じた。変化に富んだドラマチックな能楽だった。また機会があれば行ってみたい。

2011/10/30(日)(酒井千穂)

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