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artscapeレビュー

柴田敏雄「concrete abstraction」

2011年11月15日号

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会期:2011/10/07~2011/11/06

BLD GALLERY[東京都]

「concrete abstraction」という展覧会のタイトルは実に気がきいている。concreteは「具体的な、有形の、実際の」という意味だからabstraction(抽象)の反対概念だ。だが同時に「コンクリートの」という意味もあり、柴田の作品の被写体のほとんどすべてに、この「コンクリート(セメント)」で固められた建造物が写っている。しかも今回展示された写真に写っているそれらの多くは、モザイク状の平面的なパターンを強調して撮影されており、あたかも抽象画のように処理されている。concreteとabstractionという言葉の意味作用が、二重、三重に錯綜し、絡み合っているのだ。
このような遊び心のあるタイトルを付けるところに、柴田敏雄の写真家としての余裕を感じることができる。4×5インチ、20×24インチ、40×50インチの大小三種類のサイズのプリントを、効果的に配置した展示プランにも同じことを感じる。2000年代以降、プリントの方式をモノクロームからカラーに変えることによって柴田のなかに育ってきている、軽やかに弾むような表現の歓びを、今回の展示でもはっきりと感じとることができた。もうひとつ、「コンクリート」とともに目立っていたのは、ダム、水路、滝などさまざまな形態をとる水の表情への強い関心だ。コンクリートの強固な物質性を和らげ、時には完全に解体してしまう融通無碍な水のパワーは、やはり柴田の作品世界のありかたを大きく変えつつあるのではないかと思う。それが、これから先どんなふうにかたちをとっていくのかが楽しみだ。

2011/10/19(水)(飯沢耕太郎)

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