2017年11月15日号
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artscapeレビュー

ブリューゲルの動く絵

2011年12月01日号

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会期:2011/12/17~

ユーロスペース[東京都]

タイトルどおり、ブリューゲルの絵を動かした映画。レイ・マイェフスキ監督は、16世紀のフランドルを舞台にしたブリューゲルの絵画《十字架を担うキリスト》を、最新のCG技術によって映像化した。そびえ立つ岩壁の上の風車小屋や車刑のための高いポール、そして十字架を背負ったキリストを中心とした群像。絵画と同じ風景のなかで絵画と同じ人物が動き出し、画面に表わされていない前後の物語が想像的に描かれてゆく。演出上の最も大きな特徴は、絵画には描かれていないブリューゲル本人(あの『ブレードランナー』のルトガー・ハウアー!)が登場していることと、そのブリューゲルをはじめ絵画に登場しない何人かだけが言葉を語る反面、絵画に登場している人物たちは言葉を一切発しないこと。会話によって物語を綴るという文法が採用されていないため、ふだんの映画の見方がまったく通用しないところがおもしろい。むろん、ブリューゲルに精通している人であれば、また違った楽しみがあるのかもしれないし、そうでない人にとっては退屈以外の何物でもないのかもしれない。けれども、この映画の醍醐味は絵画のなかに入ってあれこれ想像をめぐらすという私たちが常日頃おこなっている鑑賞経験そのものを映像化した点にあるように思われる。一枚の絵から物音や自然音を再生することはあっても、人と人の会話まで想像することは稀だろうし、映画のラストで美術館に展示されているブリューゲルの実作をズームアウトしていくシーンは、明らかに鑑賞という想像的な脳内活動の終わりを示していたからだ。その意味で、この映画はブリューゲルについての映画というより、ブリューゲルの絵画を鑑賞する私たち自身を描いた作品だと言えるだろう。

2011/11/09(水)(福住廉)

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