artscapeレビュー

津田直「REBORN “Tulkus’ Mountain(Scene1)”」

2011年12月15日号

会期:2011/10/29~2011/11/26

hiromiyoshii[東京都]

清澄白河のhiromiyoshiiで開催された津田直の新作展。被写体になっているのは、ヒマラヤの仏教国ブータンの森と人々である。
以前の「SMOKE LINE」(2008)などでは、津田の作品を見るときの視線の運動は横方向への広がりが意識されていた。ところが今回のシリーズでは、森の樹木にしても、仏塔にしても、少年僧にしても、縦方向に垂直に伸びあがっていくように撮影されている。そのことによって、天から地へ、逆に地から天へというエネルギーの流れがはっきりと写り込んでいるように感じる。それがよく表われているのは、樹木と僧侶たちとを撮影した写真を5組、二段に重ねるように配置した展示のパートで、ここには明らかに樹木のたたずまいと僧侶たちのたたずまいに共通する要素を抽出しようという意図がうかがえる。このような照応関係は、入口近くに展示された赤い布を吊り下げたインスタレーションと、その対面に置かれた樹の枝から地面に垂れ下がるサルオガセの写真にも感じる。展示の全体に、人間と自然(植物)との、循環しつつ伸び広がっていく、緊密な関係の網の目が投影されているが、それこそが津田がブータンで見出しつつある「再生(REBORN)」の原理なのだろう。
もっとも、それは最初の段階にとどまっていて、まだまだこの先がありそうだ。Scene2、Scene3と回を重ねていくにつれて、その全体像が姿を現わしてくるのではないだろうか。

2011/11/02(水)(飯沢耕太郎)

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