artscapeレビュー

油絵茶屋再現

2011年12月15日号

会期:2011/10/15~2011/11/15

浅草寺境内[東京都]

日本の近代の黎明期にはいろいろな試行錯誤や勘違いが横行した。五姓田芳柳が浅草で始めた油絵茶屋もそのひとつ。当時まだ珍しかった油絵を、木戸銭をとって見せるという一種の見世物小屋だ。まだ画廊も美術館もなかった時代、自分たちの描いた油絵を見てもらい、普及させたいという目的もあっただろうけど、なにより売れない油絵をどうにかカネにしていかねばならないというせっぱつまった事情もあったに違いない。その油絵茶屋を同じ浅草の地に再現したのが小沢剛を中心とするメンバーだ。再現するといっても写真も資料も残っていないので、当時の引札(チラシみたいなもの)などを参考に、小屋の建設だけでなく、小池真奈美ら芸大系の若手画家たちが描いた油絵による役者絵も展示。ほんとにこんなんだったのかなあ、なんか違う気もするけど、でもこんな感じだったのかもしれない。それにしても、当時おそらく先端メディアだった油絵が、いまではほとんど最古のメディアになってしまったわけで、その先頭ランナーとビリケツをつなげたときにはたしてなにが見えてくるかを探る試みともいえるだろう。

2011/11/08(火)(村田真)

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