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南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎

2011年12月15日号

会期:2011/10/26~2011/12/04

サントリー美術館[東京都]

《泰西王侯騎馬図屏風》は桃山から江戸初期のあいだに制作された初期洋風画の代表作で、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世やフランス王アンリ4世をはじめ、ペルシャ王、モスクワ大公、トルコ王ら計8人が乗馬姿で描かれたゴージャスな屏風絵。残念ながら現在ではサントリー美術館と神戸市立博物館に分蔵されているが、今年それぞれ開館50周年と30周年を迎え夢の顔合わせとなった。もちろんいくら傑作とはいえ、これだけで会場を埋めるわけにはいかないので、狩野派による南蛮屏風や、輸出品としてつくられた蒔絵螺鈿の漆器、東西の描画技法が混在した西洋風俗図、そしてキリシタン弾圧を描いた殉教図や踏絵まで集めている。見ていくと、西洋=キリスト教によって目を開かされたのもつかのま、禁教令によって一気に闇夜に逆戻りしていった歴史が浮き彫りになり、まさにタイトルどおり「光と影」。肝腎の《泰西王侯騎馬図屏風》は予想以上の迫力で、西洋の動きや陰影表現が日本の素材とスタイルに融合し、唯一無二の絵画を創出している。その部分拡大写真がまた圧巻。髪の毛の艶、細やかな装飾、胡粉の盛り上がりまで余すところなく伝えてくれる。

2011/11/16(水)(村田真)

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