artscapeレビュー

トロールの森

2012年01月15日号

会期:2011/11/03~2011/11/23

都立善福寺公園とその周辺[東京都]

10周年を迎えた野外の展覧会。善福寺公園のそこかしこに16人のアーティストによる作品が展示され、あわせて会期中に8組のユニットやグループによるパフォーマンスも発表された。ひときわ異彩を放っていたのは、ヤック・ピーターズ。廃材を組み合わせてつくった小さな映画館でストップ・モーション・アニメーションを見せた。公園の一角に建てられた小屋をのぞくと、内部に小さなスクリーンとプロジェクターが設置されていて、来場者が訪れるたびに、自作の音楽を伴った映像が上映されるという仕掛けだ。映像そのものはイメージが次々と変容しながら連鎖していく中庸なものだが、おもしろかったのはアーティストの身ぶりと佇まい。映像が終わると、なぜか唐突に歌を歌いだした。どんな詩を歌っているのかわからなかったし、それが映像と関係しているのかも定かではなかったが、おそらく歌も作品の一部なのだろう。来場者をもてなすホスピタリティーと、ありあわせの材料で作品を構成するブリコラージュ。ヤック・ピーターズはアーティストが本来的に旅芸人であることを、身をもって表現していたようだった。

2011/11/23(水)(福住廉)

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