2017年10月15日号
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artscapeレビュー

梅田哲也 展 小さなものが大きくみえる

2012年01月15日号

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会期:2011/11/12~2011/12/04

新・福寿荘[大阪府]

梅田哲也といえば、日用品や廃品を再構成することで、かすかな音やひそやかな美を見せる作品で知られるが、今回の展覧会でそれが必ずしも小さな感動に限られているわけではないことを、新たに知った。会場は、大阪の下町と山の手のちょうど境目の斜面に立つ古いアパート。昔ながらの古い街並みを侵食するジェントリフィケーションを目の当たりにさせられる、文字どおりの瀬戸際だ。中へ入ると、天井の随所から細い紐がぶら下がっている。引くとわずかに手ごたえがあるが、特別な音が出るわけではないし、何かが動き出すわけでもない。訝しく思いながら押入れに設えられた小さな階段を上がると天井裏に抜けるが、そこで「なるほど!」と合点がいった。暗闇の底に広がっていたのは、数々の照明器具。誰かが下で紐を引くと、さまざまな色の灯りが点滅するという仕掛けだ。夜の海できらめく夜光虫のような光景がなんとも美しい。天井裏の一角からスロープを降りると、アパートの外部へ出た。側壁をぶち抜いてスロープを天井裏まで延ばしてしまったわけだ。いくら古いとはいえ、アパートの空間全体を大胆に再構成する発想に驚かされた。小さな光や音といえども、その背景を思い切って改造することで、大きな感動を呼ぶことがある。その原則は、同時期に神戸アートビレッジセンターで催された個展で発表された、会場の壁を持ち上げる作品や大量の羽毛を扇風機で巻き上げる作品などにも一貫していた。地域におもねることなく、自らの表現を最大限に開示する身ぶりが潔い。一時的とはいえ、この大胆不敵な展覧会が催されたことこそ、地域への貢献というべきだろう。

2011/11/25(金)(福住廉)

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