artscapeレビュー

花岡伸宏 個展 “入念な押し出し”

2012年02月15日号

会期:2012/01/17~2012/01/29

ギャラリー恵風[京都府]

見る側の判断や理解という認識、そこから物語の想像におよぶまでの思考を混乱させるような、脈絡のないイメージを組み合わせた作品を発表している花岡伸宏の個展。今展には丸めたカーペットの穴に差し込まれたビデオカメラが突っ張り棒で押し出されるという工程がそのまま流れる映像のほか、木彫りの彫像と組み合わせた角材から、トコロテンのように桜えびを混ぜた樹脂が押し出されているイメージの立体などが展示されていた。同ギャラリーで2010年に開催された個展「ピンセットの刺さった円柱の飯は木彫りの台を貫通する」でも、意味不明のタイトルをそのまま表わすような作品を発表していたが、花岡の立体作品は、こちらの常識や既成概念、記憶のイメージをスパッと断ち切りながら、どれにも可笑しさや不気味さがあってついつい苦笑してしまう。これはモチーフ同士のイメージのギャップや組み合わせから別の物語性が喚起されるということもあるだろうが、それ以上に彼の卓抜した造形力あってのものなのだと今展で改めて感じた。花岡の作品の格式的で堅実な彫像はそれだけでも美しく、それでいて反抗的で滑稽だ。

2012/01/28(土)(酒井千穂)

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