artscapeレビュー

今道子「IMPACT」

2012年03月15日号

会期:2012/01/26~2012/02/12

B GALLERY[東京都]

マッチ&カンパニーの「M/Light」レーベルから出た『IMPACT』は、今道子のひさびさの写真集。1970年代のキャベツのシリーズから2010年の近作まで35点が、大判のページにゆったりとおさめられている。その刊行を記念して新宿BEAMS JAPANのギャラリー・スペースで開催されたのが本展。写真集に収録された作品に加えて、2011年12月の飯沢耕太郎との二人展(銀座・巷房)で初めて公開された新作「鰯+眼+障子」のシリーズと、「めまいのドレス」も展示されていた。
今道子は一貫して、魚や野菜などの食物を素材にしてマニエリスティックな「ありえないオブジェ」をつくり上げて撮影してきた。その食感と触感を刺激しつつ、観客をリアリスティックな幻想の世界に引き込んでいく強度は、まったく衰えていないどころか、さらに強まっているようにも見える。だが、新作にはこれまでにない要素も加わってきている。「鰯+眼+障子」の障子の格子模様はどこか和風のテイストだし、「めまいのドレス」にはこれまでの彼女の作品には考えられない「ブレ」が効果的に使われているのだ。今はプライベートな事情もあって、2000年代のはじめから10年あまりほとんど作品を発表できなかった。その間に蓄積していた表現のエネルギーが、いま一挙に解放されようとしているのではないだろうか。基本的な制作の姿勢は変わらないだろうが、これまでにない要素が加わってくることで、作品世界のスケールが一回り大きくなってくることが期待できそうだ。

2012/02/01(水)(飯沢耕太郎)

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