artscapeレビュー

恵比寿映像祭 映像のフィジカル

2012年04月01日号

会期:2012/02/10~2012/02/26

東京都写真美術館[東京都]

4回目の恵比寿映像祭。ウィリアム・ケントリッジやサラ・モリス、大木裕之など国内外14組のアーティストによる映像作品が展示された。映像技術のハイ・テクノロジーを追究する作品もあれば、あえてロー・テクノロジーを見せる作品もあり、その雑然とした展示は、映像の時代における百花繚乱を象徴しているとも言えるが、たんにアーティスティックなイメージの垂れ流しとも言える。長時間の鑑賞に堪えない作品が大半を占めていたなか、ひときわ異彩を放っていたのが、東京シネマによる科学映画。テレビを生産する工場のラインをつぶさに追跡したり、配電盤をクローズアップでとらえたり、その映像の質がいちいち魅力的でたまらない。それは、あるいはアナログ映像で育った世代に特有のノスタルジーにすぎないのかもしれないが、その一方で、現在の映像表現が直面している限界を示唆しているようにも思われた。日常生活の隅々まで侵食するほど映像が氾濫しているがゆえに、例えばかつての「ビデオアート」のように、映像というメディアが「アート」という価値を半ば自動的に担保することが難しくなった現在、私たちはいかにもアーティスティックな映像に辟易しているのではないか。むしろ「記録」という映像の最も基本的な機能に、「アート」は反転してしまったように思えてならない。

2012/02/23(木)(福住廉)

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