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第31回損保ジャパン美術財団選抜奨励展 Final

2012年04月15日号

会期:2012/03/03~2012/04/01

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

損保ジャパン美術財団による新進作家の支援を目的とする展覧会。二科会や国画会など既成の公募美術団体から1人ずつ選んだ計53人(絵画35人、立体18人)に加え、美術ジャーナリストや学芸員らの推薦による27人の絵画も合わせて80点を展示している。いわば団体系とインディペンデント系の呉越同舟だ。ポップでマンガチックなペインティングを何枚か組み合わせた高木真木人(野田裕示推薦)、ブルーグレーを基調にした表現主義的な抽象ながら軽やかさも感じさせる室井公美子(近藤昌美推薦)、油彩の特性を生かしつつ一見イラスト風の明快なイメージを定着させた小野さおり(名古屋覚推薦)らの作品が目に止まった。ちなみに小野は損保ジャパン美術賞、室井は秀作賞を受賞。もちろん3人ともインディー系で、団体系の作家は(立体を除き)ひとりも受賞していない。はっきりいってインディー系と団体系のレベルの差は歴然としている。展示は両者を明確に分けていないが、違いは一目瞭然なのだ(両者は額縁の有無でも見分けられる)。そもそもこの奨励展、77年から美術団体に財団奨励賞を授与し始め、81年から受賞作家を集めて開かれてきたもので、推薦制のインディーが加わったのは01年からのこと。おそらく80年代あたりから美術団体が大きく後退したため、インディー系に触手を伸ばす必要が出てきたのだろう。今回タイトルに「Final」とあるのは、現在のようなシステムはこれで終わりにし、13年から新たな公募展「損保ジャパン美術賞展」を始めるからだそうだ。おそらく団体系とインディー系の二重基準を解消するためだろう。

2012/03/16(金)(村田真)

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