2017年12月15日号
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artscapeレビュー

村山知義の宇宙 すべての僕が沸騰する

2012年05月01日号

会期:2012/02/11~2012/03/25

神奈川県立近代美術館 葉山[神奈川県]

なにもないからこそ、なんでもやる。関東大震災にせよ、東京大空襲にせよ、広島・長崎への原爆投下にせよ、私たちの先達たちは焦土と化した焼け野原からいくども立ち上がり、その都度いくつもの文化や芸術を生み出してきた。村山知義の回顧展をつぶさに見て思いを新たにしたのは、豊かな芸術は貧しさのなかから生まれるという厳然たる事実。演劇から美術、写真、書籍、看板、はては建築にいたるまで、村山が手がけた創作物はじつに広範なジャンルに及んでいる。大量に集められた展示物の物量が、村山自身の貪欲な創作意欲を物語っているようで、まさしく沸騰する村山の迫力に圧倒されてやまない。それらのいずれもが貧しい時代の只中でなんとかやってきた格闘の痕跡と言えるが、村山が苛まれていた貧しさとはまた別の貧しさが世界を覆いつつある現在、はたして野性的で生命力にあふれた、新しい芸術は生まれるのだろうか。

2012/03/21(水)(福住廉)

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