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artscapeレビュー

藤牧義夫 展 モダン都市の光と影

2012年05月01日号

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会期:2012/01/21~2012/03/25

神奈川県立近代美術館 鎌倉[神奈川県]

1930年代の創作版画の一翼を担った藤牧義夫の回顧展。版画や素描、葉書など、およそ200点が展示された。なにより30年代の街並みを忠実に反映しているように思える陰影に富んだ版画の迫力がすばらしい。同じ図像でも版によってテクスチュアが異なることを見せるために複数点を同時に展示するなど、見せ方もおもしろい。本展の見どころは幅25センチ、全長13メートルを超える白描絵巻で、たしかに見応えがあったものの、むしろ注目したのはポスターでたびたび発揮された創作的な文字の数々。《新版画集団4回展ポスター(バレンと手)》(1934)には、「新版画集団個展」という文字が縦方向に並べられているが、このうちの「個」の文字が「4回」とも読めるように組まれており、4回展の意味合いを重ねた遊び心が発揮されていることがわかる。ここには、版画を版画として自立させようとする純粋芸術の志向性というより、むしろ文字というもっとも身近で、だからこそもっとも改変しやすい素材を使って遊ぶ限界芸術のそれが明らかにうかがえる。藤牧によるレタリングは、例えば佐藤修悦によるガムテープ文字に継承されているのではないか。

2012/03/22(木)(福住廉)

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