artscapeレビュー

永原トミヒロ展

2012年05月01日号

会期:2012/03/19~2012/03/31

コバヤシ画廊[東京都]

永原トミヒロの新作展。ここ数年、明るいのか暗いのか判別しない、光と闇が溶け合ったかのような幻の街並みを一貫して描いているが、今回の個展で発表された絵画には鏡のような水面が前面化してきた。苗植え前の田んぼなのだろうか、広い水面には後景の建物が明瞭に反映している。この対称的な図像が、窓も入り口も見当たらない建物で構成された無人の街並みに、独特の気配をもたらしていたようだ。たしかな対象として認知することはできないにせよ、なにかの存在をどこかで感じ取る想像力。今日的なリアリティーが立ち上がってくるのは、この点である。

2012/03/30(金)(福住廉)

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