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今和次郎 採集講義──考現学の今

2012年06月01日号

会期:2012/04/26~2012/06/19

国立民族学博物館[大阪府]

建築家で、考現学の創始者として知られる、今和次郎(1888-1973)のユニークな活動を概観する展覧会。今が残したスケッチ、写真、建築やデザイン図面などが紹介されている。今は、昭和初期の急速に都市化していく東京の様子や人々を観察し記録する(考現学)一方、民家研究の分野においても重要な業績を残している。さらに、農村住宅改善案の設計や住宅・共同作業場の設計などにも携わった建築家でもあった。「私はつくづく、自分はいま現在のこと、人々が働き、楽しみ、いろいろくふうをこらしているさまに興味をもつ性格だったのだと思う。だからこそ震災後の焼け跡に、つぎつぎと仮小屋がたてられ、人々が焼け落ちた過去のなかから新しい生活をたてなおす姿をみて、ほんとうに感動できたのだし、考現─いまを考え、未来をつくることの必要を痛感したのであったと思う」と今はいう★1。彼の活動の本質を表わす言葉ではないかと思った。[金相美]
★1──本展カタログ『今和次郎 採集講義』(青幻舎、2011)。

2012/05/13(日)(SYNK)

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