artscapeレビュー

レディ・ディオール・アズ・シーン・バイ

2012年06月15日号

会期:2012/04/22~2012/05/20

和光並木館1F[東京都]

近ごろ有名ブランドショップが次々と現代美術に触手を伸ばしているが、同展はクリスチャン・ディオールの婦人用バッグ「レディ・ディオール」をモチーフに、立体、写真、映像などのコミッションワークを公開するもの。出品はブルース・ウェーバー、ナン・ゴールディン、デヴィッド・リンチらに加え、日本から名和晃平、鬼頭健吾、宮永愛子らが参加している。こういう場合、お調子者は商品をヨイショする作品をつくりがちだが、それではたんなる宣伝にしかならないし、主催者もそんなものを望んではいないだろう。だからといって商品を告発するような作品が歓迎されるはずもないが、しかしどこかで批評精神は保っていたいみたいな。そんな条件下でアーティストがどんな解を出すのかが見どころとなる。写真にはそのまま広告として使えそうな作品もあるが、たとえば、商品(レディ・ディオール)を片手に血を流して路上に横たわる女性を撮ったコートニー・ロイのようなキワドイ写真もある。立体にはもっと過激な作品もあって、半透明の樹脂製のバッグを銃で打ち抜いた瞬間をそのまま固めたようなオリンピア・スカリーの作品や、もともとワニ皮製だったのか、透明樹脂でかたどったバッグのなかにワニの頭蓋骨を入れたウェン・ファンの作品もあって、けっこうスリリング。

2012/05/17(木)(村田真)

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