2018年06月15日号
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artscapeレビュー

アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る

2012年07月15日号

会期:2012/06/16~2012/10/28

森美術館[東京都]

大ざっぱな印象を述べれば、以前こちらでやったインド現代美術展「チャロー!インディア」や、アフリカ現代美術展「アフリカ・リミックス」とかなり近い。なにが近いかというと、おそらく欧米を核とするアートワールドとの距離感だ。欧米との距離が近いのではなく、欧米との距離感がインドからもアフリカからもアラブからもほぼ等しく遠いということだ。地理的に見てもアラブはインドとアフリカのあいだに位置するので、当然といえば当然だが、しかしこれら3地域は地続きでありながら、気候風土も民族も宗教・文化も政治体制もすべて異なっている(一部重なっているけど)。にもかかわらずほぼ等距離に感じたのは、これらの3展が似たような視点や価値観で構成されているからだろう。つまり、欧米の現代美術の流儀にのっとったうえでインドやアフリカやアラブの社会・文化を反映した作品が選ばれている、ということだ。たとえば、サウジアラビアのアハマド・マーテルの《マグネティズム》。黒く四角い立体のまわりに小さなものが渦巻いている写真で、磁石に引き寄せられた鉄粉を撮ったものだが、イスラム世界を少し知っている者は、カアバ神殿の周囲に群がる巡礼者たちを思い起こすに違いない。このようなダブルミーニングは比較的わかりやすいため多くの作品に見られる。いずれにせよこれらは「いかにもアラブな現代美術」であり、アラブの現在の一端を知るにも、また現代美術の一端を知るにも好都合かもしれない。その意味では不特定多数の観客が入場する森美術館らしいセレクションといえる。個人的に好きなのは、パレスチナのハリール・ラバーハによる、絵画が写っている展覧会の写真をスーパーリアリズムで描いた作品。彼はこの作品が展示された風景をもういちど描いてるらしい。絵を撮った写真を描いた絵を描いてるってわけ。

2012/06/15(金)(村田真)

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