2018年10月15日号
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artscapeレビュー

安世鴻写真展「重重 中国に残された朝鮮人元日本軍『慰安婦』の女性たち」

2012年07月15日号

会期:2012/06/26~2012/07/09

新宿ニコンサロン[東京都]

文字どおり重々しくて長ったらしく、過剰に反応する人たちもいるらしいタイトルとは裏腹に、写真そのものはきわめて淡々としている。写されているのは、中国のどこかの田舎町を背景にした老婆たち。室内も衣服も質素で飾り気がなく、表情はおしなべて暗い。なかには泣いている人もいる。それをツヤのない和紙のような紙に粒子の粗いモノクロームプリントで焼き付けている。画面がどれもわずかに斜めに傾いているのは、被写体の不安定さを表わすと同時に、三脚を使わない撮影者と被写体の近さも証しているのだろう。作品そのものからは特別に政治性を感じることはない。つーか、そもそもあらゆる作品は政治性を含んでいるわけだし。ある種の人たちが過剰に反応するのは写真ではなくタイトル、つまり言葉に対してだろう。でもこれは言葉の展覧会でなく、写真展だ。それともニコンは写真を見る目がないのだろうか。いずれにせよ、ニコンの起こしたドタバタ騒動が結果的にこの写真展の宣伝に大きく役立ったことは間違いない。じつはそれがニコンの作戦だったりして。

2012/06/28(木)(村田真)

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