2018年10月15日号
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artscapeレビュー

林ナツミ「本日の浮遊」

2012年07月15日号

会期:2012/06/16~2012/07/29

MEM[東京都]

大ブレイクの予感を感じさせる写真展だった。6月16日に、僕と作者の林ナツミのトークイベントが開催されたのだが、雨模様にもかかわらずNADiff a/p/a/r/tIFの会場は超満員。林の写真への関心の高さを肌で感じることができた。彼女が「本日の浮遊」シリーズを、1年間の予定で自分のブログ「よわよわカメラウーマン日記」で公開しはじめたのは2011年1月1日だった。その「浮遊少女」のパフォーマンスは、特に海外で尻上がりに反響を呼び、台湾での写真展、写真集の刊行につながっていく。ブログやフェイスブックなど、これまでとはまったく違う回路で人気に火がついたというのは注目すべき現象だと思う。今回の個展の開催に続いて、7月には青幻舎から同名の写真集も刊行される予定だ。
林の写真の魅力は、撮影場所の設定から、実際の撮影、そしてプリントの選択、ブログへのアップに至るまでのプロセスを丁寧に、まったく手を抜かずにやっている所から来ているのだろう。1回の撮影で100回以上もジャンプすることもあるというから、体力がよく続くものだと感心してしまう。最初の頃は、まさに1日1枚のペースで発表していたのだが、あまりにも手間と時間がかかるので、自分のペースで制作することにして、現在は2011年6月の時点まで達しているのだという。なお、彼女はパフォーマンスに専念していて、シャッターを切っているのはパートナーの原久路である。「バルテュス絵画の考察」シリーズで、これまた内外の注目を集めている彼との共同作業も、「本日の浮遊」の大きな要素となっているのではないだろうか。まだ時間はかかりそうだが、ぜひ最後まで「浮遊」を全うし続けていってほしいものだ。

2012/06/16(土)(飯沢耕太郎)

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