artscapeレビュー

安世鴻 写真展

2012年08月01日号

会期:2012/06/29~2012/07/09

新宿ニコンサロン[東京都]

「従軍慰安婦」とされた朝鮮人女性たちの現在をとらえた写真。開催の反対を訴える抗議活動を受けて、会場を運営するニコンが写真展の中止を決定するも、写真家が仮処分を申請したところ、東京地裁が会場使用を命じ、ようやく開催された。会場の入り口には警備員が立ち、来場者は持ち物検査の後、金属探知機を通過してはじめて写真を鑑賞することができた。とはいえ、会場の物々しい雰囲気とは裏腹に、展示された写真は一見すると静謐そのもの。モノクロ写真のなかの老婆たちは、ゆるやかな時間に身を委ねながら、ある者は追憶し、ある者は激情を押し殺し、ある者は哀しみに暮れていたように見えた。展覧会の開催によって彼女たちに出会えたことの意義は大きい。

2012/06/29(金)(福住廉)

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