artscapeレビュー

松本央「Beast Attacks!! 2──over drive」

2012年09月15日号

会期:2012/07/10~2012/08/31

BAMI gallery[京都府]

自画像を描き続ける松本央の新作展。市場原理主義という名の下に大量生産、大量消費を繰り返し、ますます肥大化していく世界経済の消費システム。それにも麻痺し欲望を満たそうとする現代人の“野獣化”を、前回の個展「Beast Attacks!!」に引き続き、自画像で表現した作品を発表した。獣のように肉に喰らいつく若者達や、いわゆる社会通念的「不良」(を思わせる)グループなど、画面に描かれた暴力的で邪悪なイメージの人々はどれも作家自身で、自画像でもある。不穏な雰囲気に包まれていて怖いのだが、その迫力は彼の画力が裏打ちするものでもあり、じっくりと眺めてしまう。前回の個展ではこのような毒っ気の強烈な作品の印象が強かったのだが、今展には、それらとはずいぶん趣きの異なる作品もあった。《ALBINO(アルビノ)》や鉛筆のドローイングだ。いずれも鬱蒼としているというのか疲弊した表情で、見る者をその幻滅の深みに引き込むかのような眼がとても魅力的であった。たいへん解りやすいテーマの個展シリーズだが、前回よりも表現の幅が広がって豊かなものになっていた。今後も楽しみ。

2012/08/20(月)(酒井千穂)

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