artscapeレビュー

日本ファッションの未来性

2012年11月01日号

会期:2012/07/28~2012/10/08

東京都現代美術館[東京都]

ファッションの展覧会でいつも不満に思うのは、服飾がちっとも美しく見えないことである。マネキンに着用させられた服飾はいかにも味気なく、生命力に乏しく、場合によっては色あせて見えることすらある。
80年代の川久保玲と山本耀司から2000年代にかけての日本のファッション・デザイナーを総覧した本展も、さすがに川久保と山本の展示には空間構成に多少の工夫は施していたものの(それにしてもまたもや紗幕だ!)、それ以外の展示はあまりにも粗く、とても正視に耐えるものではなかった。真っ白いホワイトキューブに、特別な照明を当てるわけでもなく、年代物の服飾を物体として展示しているので、その「古さ」だけがやけに目立っているのである。
服飾は、美術や工芸以上に、今も昔も人間の暮らしや身体と密接しているのだから、それらを美術館に持ち込むことには、美術や工芸以上に格別に配慮しなければならないのではないか。服飾を最高の状態で見せることに全神経を注いでいるファッション・ショーを再現する必要は必ずしもないとはいえ、美術館であれば美術館独自の見せ方を開発するべきである。

2012/10/05(金)(福住廉)

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