2024年03月01日号
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artscapeレビュー

メトロポリタン美術館展「大地、海、空──4000年の美への旅」

2012年11月15日号

会期:2012/10/06~2013/01/04

東京都美術館[東京都]

最初に「メトロポリタン美術館展」を見たのは高校生のとき。ボナールのバラ色の絵が美しかったなあ。以来40年、何度開かれたことだろう。メトロポリタンに限らず、ルーヴルもエルミタージュも数年に一度はコレクション展が開かれている。彼らは数十万から数百万点ものコレクションを持っているから、毎年100点ずつ違う作品を選んでも1万年は続けられる計算だ。でもそれじゃあ芸がないので毎回テーマを立てることになる。ちなみに40年前の初の「メトロポリタン美術館展」のときはテーマなし、サブタイトルもなしの名品展だったが、それでも30万人もの人が集まった。今回はテーマが「自然」、サブタイトルは「大地、海、空──4000年の美への旅」というもの。これは西洋美術の紹介としては王道からはずれるけど、自然と親しんできた日本人向けには妥当な設定かもしれない。作品は、理想化された風景や人の手の入った農村風景、動植物を描いた絵や工芸、自然をとらえた写真など、時代もジャンルもさまざまで、プッサン、レンブラント、ターナー、ドラクロワ、ミレー、モネ、ゴッホと、巨匠たちの作品もそろってる。また、日本向けを意識したのか、ティファニーのガラス工芸やカエルをモチーフにしたお盆、エミール・ガレの飾り棚など、日本美術の影響を受けたジャポニスム系の作品も目についた。そうやって見ると、ゴーガンの《水浴するタヒチの女たち》もジャポニスム色の濃い絵であることに気づく。いろんな意味で楽しめる展覧会。残念なのは、メトロポリタンはフェルメール作品を5点も持ってるのに1点も来てないことだが、「自然」がテーマだから仕方がないか。

2012/10/05(金)(村田真)

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