2024年03月01日号
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artscapeレビュー

美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年

2012年11月15日号

会期:2012/10/16~2013/01/14

東京国立近代美術館[東京都]

開館60周年を記念するコレクション展。華やかさには欠けるけど、ほかの美術館から有名作品を借りて祝うより、たとえ貧弱でも自前のコレクションを精一杯見せるほうが誠実だし、好感がもてる。でもタイトルのように「ぶるっ」た作品がはたしてどれだけあっただろうか。たとえば岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》とか関根正二《三星》とか橋本平八《幼児表情》とか、たまにぶるってもプチぶる程度。もう少しぶるっちゃう作品はようやくその後に出会う。戦争記録画だ。宮本三郎《山下、パーシバル両司令官会見図》にしろ藤田嗣治《サイパン島同胞臣節を全うす》にしろ、色彩は暗いけど、やっぱり密度や緊迫感が違うなあ。戦争記録画が終わってしばらく行くと、妙に明るく乾いた現代美術が目に飛び込んできて面食らう。なんかヘンだなあと思いつつ外に出たら、第2部「実験場1950s」の入口があった。そうか50年代が抜けてたんだ。こちらは全国の美術館から作品を借りての大展開。でもなんで50年代だけ拡大するの? と思ったら、近代美術館ができたのが1952年だからということらしい。そのため50年代美術を紹介するというより、写真やイラスト、デザインも含めて時代気分を浮かび上がらせようとしている。こんな大変な時代に近美はスタートしたんだと。

2012/10/15(月)(村田真)

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