泉洋平「いくばくの繭」:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

泉洋平「いくばくの繭」

2012年11月15日号

会期:2012/09/15~2012/10/07

studio90[京都府]

京都市内でも中心部からは離れた場所にある、泉洋平、田中真吾、森川穣という3名のアーティストの制作スタジオである「studio90」。ギャラリースペースも設けられたここでは、頻繁にではないが、立ち上げ以来彼らの企画による展覧会が行なわれてきた。その12回目にして、このスペースでの最後の展覧会として開催されたのが泉洋平の個展。最終日になったが私も足を運んだ。会場は一見普通の住宅建築で、玄関で靴を脱いで室内に上がる。展示室に続く暗い通路の先をしゃがんで先に進むように案内があった。それにしたがいしゃがんで光の射すほうへ進むと、期待以上の光景が広がっていたので興奮。じつにあっと目を見張るようなインスタレーションだった。真っ白な糸が部屋の四方八方に張り巡らされており、中心は今展のタイトルのとおり、繭を想起させる球状の空間になっていた。中心部分では鑑賞者は立ち上がって中を体験することができるのだが、そこに立つとこの球状の空間が、すべて真っすぐ、直線に張った糸によってできているということがよく理解できる。向きや角度によっては、それぞれの糸の線は光の加減で見えたり見えなかったりするため、全体に朧げで儚げな印象があるのだが、そのイメージとはうらはらの緻密な構成を思い知り、たいへん細やかな仕事ぶりにただ感心。そして床に寝転がったときの眺めが素晴らしい。窓からの採光で、無数の糸の表情が移り変わっていくのだが、その有り様が非常に豊かで美しく、いつまでも見ていたかったほど。「studio90」の最後を飾るのにふさわしい展覧会だった。泉の今後の発表もとても楽しみだ。


会場風景

2012/10/07(日)(酒井千穂)

2012年11月15日号の
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